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対韓制裁、ほくそ笑む習近平

2019年7月7日(日)20時13分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

協力してくれたら大学名は出さないと言っているのだからいいではないかと思うのだが、ソウル大学が抜けることによって韓国全体の学力レベルが低くなることは心配しない。一般には韓国の一流大学と言えばソウル大学が入っていると国際社会は思うだろうから、ソウル大学が抜けた状態で韓国の平均値が出ると、ソウル大学にとっても不利に働くのではないかと説得したのだが、ウジウジとして首を縦に振らない。

彼等は自信がないだけでなく、愛国心もなければ、「よし、やってやるぞ!」といったチャレンジ精神もない。

ノーベル賞が良いか悪いかは別として、ノーベル賞的研究成果は、一般に失敗から生まれることが多く、失敗するか成功するかという「結果」など考えずに「これを見極めずにはいられない」という抑えがたい知的好奇心に駆られて研究に没頭するものだ。

そういった精神風土がソウル大学にはまるでなかった。こんな大学からノーベル賞受賞者など生まれるはずがないだろうと、あのとき実感した。

決して韓国や朝鮮民族を蔑視しているわけではない。

拙著『チャーズ 中国建国の残火』にも詳述したように、1948年晩秋、餓死体の上で野宿しながら食糧封鎖を受けた長春を脱出して辿り着いた延吉でありつけた食べ物の美味は生涯忘れられない。当時は7割以上が朝鮮族だった延吉では、右隣に住む金(キム)老人や左隣の住人、ヨンフィという少女と仲良くなった。ヨンフィは片目が濁り上唇が裂けていたが、飛び抜けた美声の持ち主で、ブリキのバケツの中に頭を突っ込んで天に向かって歌い上げ、私を感動させたものだ。ヨンフィとの間に育まれた、そこはかとない友情は今も私の胸を締め付ける。このように、民族蔑視などという気持は微塵もないことを明示しておく。

日本は、習近平を喜ばせていることに気付いているだろうか?

言いたいのは、サムスンを日本の半導体を凌駕するところまで持って行ったのは、日本の大手製造業の技術者軽視であり、当時の通産省の怠慢であり、そして韓国半導体メーカーの「抜け目のない狡賢さ」だということだ。だから韓国半導体メーカーが多少の痛手を蒙るのは当然だろうと思っている。

もっとも、韓国に半導体材料などを輸出している日本の関連企業が被害を蒙らないのかと言うと、そうではあるまい。

しかし私の関心事は、もっぱら「日本が初めて断行した対韓制裁が、習近平をこの上なく喜ばせていることに、日本政府は気が付いているのか否か」という点にある。

考えてみてほしい。

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