日本と韓国の和解をアメリカが望む訳
The US Needs Japan-South Korea Reconciliation
日米両政府の積極的なインフラ政策はエネルギー安全保障にとどまらない。今年2月には米エネルギー資源担当のフランシス・ファノン国務次官補がソウルと東京を訪問し、アジア・エッジやJUSEPのような成功を土台にさらなる前進への話し合いを行った。こうしたハイレベルの議論によって、多国間の経済規範を設定する道がさらに開かれるだろう。
地政学的な競争で決定的に重要な分野における協力体制を発展させるアプローチとして、アメリカは日米韓3国の財界の連携にも取り組んでいる。
5月に予定されていた日韓経済人会議は日韓関係の急速な悪化から延期になったが、こうした財界トップ会談への熱意は衰えていない。
またTPP(環太平洋経済連携協定)を離脱したとはいえ、アメリカはアジアにおける多国間の経済連携を支援する複数のプロジェクトに関与している。トランプ政権は「自由で開かれたインド太平洋戦略」に力を注ぎ、昨年7月にはワシントンでインド太平洋ビジネスフォーラムを立ち上げた。
海外インフラ投資の支援・強化を目指す18年のBUILD法や、アメリカのアジア経済政策に関する超党派的ビジョンを提示したアジア再保証推進法も、地域の途上国市場における貿易の円滑化および能力開発に対するアメリカ政府の持続的な熱意を裏書きしている。
一般市民の対話を促す
18年5月には日本の経団連の尽力によって、各国のトップ経済人が集まる第7回日中韓ビジネスサミットが開催された。同月、米商工会議所と経団連、韓国の全国経済人連合会は、新興市場での3国協調への幅広い民間部門の意欲を反映し、北朝鮮における将来の機会を検討するための会合を開いた。
韓国政府は途上国の経済開発に共同で取り組むこの構想に対する業界の関心に気付くのが遅かったが、米日韓の各政府が産業界のトップを集めて会議を組織すべき時期が来ている。
最後に、アメリカは日韓両国が歴史を克服する手助けをする必要がある。
これまで日韓両国の歴史認識の相違を乗り越える試みはほとんど成功していない。02年から専門家による共同研究が行われたが、両国の隔たりは今も解消できていない。若い世代の日本人は第二次大戦の教訓を忘れつつあり、過去を反省しようという機運は薄れている。
こうなれば政府に頼らず、民間主導の対話を続けていくことが、永続的な関係に必要な共通の歴史認識をつくり上げる唯一の方法かもしれない。
だからアメリカは政府レベルに限らず、あらゆる努力を後押しすべきだ。エリート層がいくら立派な勧告を出しても、それだけで長年にわたる不信感を覆すことはできまい。むしろ必要なのは、学者や教育者、学生、ジャーナリスト、ビジネスリーダーなど、両国からさまざまな一般市民を集めて率直な対話の場を設けることだ。
いくら共通する国益に集中したとしても、地政学的ないし経済的な国家戦略だけでは、日韓両国の間にくすぶる相互不信は解消できない。
<本誌2019年7月9日号掲載>
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