日本と韓国の和解をアメリカが望む訳
The US Needs Japan-South Korea Reconciliation
いま必要なのは、経済成長の鈍化や人口の高齢化、中国経済への依存といった共通の問題の解決に向けて日韓が協調することではないか。韓国は17年に、アメリカ製の最新鋭ミサイル迎撃システムを配備すると決めたが、中国の経済的報復に抗し切れなかった。しかしその後の日韓両国は、徐々に中国への対抗姿勢を強めている。
財界・経済界の連携重視
そこで注目したいのが次世代通信規格の5G問題だ。韓国政府は中国製の機器を容認する姿勢を見せるが、米日韓の民間企業は結束して華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の排除網を築こうとしている。
昨年10月、韓国のサムスンは日本のNECと組んで5G関連技術の開発に取り組むと発表した。今年6月には米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)との提携も発表した。
アメリカはこの状況を生かすことができる。まずは日韓それぞれに共通の国内問題の解決に役立つ技術協力を促すことだ。韓国にも高齢化の危機が迫っている。高齢者医療や健康関連商品といったシルバー市場には無限の可能性がある。
急成長する新興国市場に打って出るのもいい。東南アジアに進出して経済を多様化させるという文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「新南方政策」はなかなか野心的だ。とはいえ韓国政府の存在感は、まだ東南アジアでは薄い。
対してODA大国の日本は15年に、インド太平洋地域で道路や鉄道、橋梁、港湾などを整備する「質の高いインフラパートナーシップ」構想を打ち出している。しかし中国は技術面でも実力を付け、今やインフラ整備で日本の優位を脅かす。15年にはインドネシアの高速鉄道計画で、日本に競り勝って契約を獲得した。世界中に中国製品を広める国家戦略「中国製造2025」も健在で、再生可能エネルギーや人工知能(AI)の技術では日韓をリードしている。
ところがエネルギーやサイバーセキュリティーなどの重要インフラに対する安全保障上の脅威に関する韓国政府内の政策論議は、まだ十分に深まっていないようだ。民間の原子力産業に関する議論も、エネルギーの持続可能性より核不拡散の問題に偏り、戦略的に狭い。
一方、日本とアメリカは1973年の石油ショック以来、幅広くエネルギー安全保障に取り組んできた。両国は今、原油価格の変動に影響されやすいインド太平洋地域諸国のエネルギー確保を支援している。
例えば日米戦略エネルギーパートナーシップ(JUSEP)は、アメリカのアジア・エッジ(エネルギーを通じたアジアの開発と成長の促進)構想と日本政府による各国のエネルギー産業に対する100億ドル規模の支援を連携させる試みだ。
JUSEPは既にインドとスリランカで液化天然ガスや再生可能エネルギーの供給を支援し、インド太平洋地域のさまざまな軍事的・商業的な要所を支配しようとする中国の「真珠の首飾り」戦略に対抗している。