人気爆発の老け顔アプリFaceApp──ロシアに流れる顔データベースの危うさ
危ないFaceApp ABC-YouTube
<AIの画像認識技術をつかって写真の性別や年代を変えることができるアプリ「FaceApp」が、爆発的な人気を博していたが、その危ない利用ポリシーが問題になっている......>
最近ソーシャルメディアで頻繁に目にする、顔の変換(写真の加工)アプリは、AIの画像認識技術により、性別や年代の違う自分に出会えるとあって、アメリカでも大人気だ。
男女の入れ替えができたり、子ども時代に戻ることができる「Snapchat」や、未来の老人顔を予想する機能もある「フェイスアップ」(FaceApp)など、試したことのある人もいるだろう。
ブームを助長するのは、セレブたちだ。ドレイクやジョナス・ブラザーズら有名人が次々に老け顔フィルター機能を使った未来の肖像をInstagramにアップし、老け顔アピール。アプリはハッシュタグ「#faceappchallenge」などで爆発的に拡散中だ。
フェイスアプリの正確度はどれほどか
英BBCは実際に、俳優イアン・マッケラン(80歳)やアーノルド・シュワルツェネッガー(71歳)などの20代のときの写真を使い、老け顔アプリの正確度を試す実験をしている。
それぞれの結果について、「75歳ごろの写真にそっくり」「許容範囲」とアプリの正確度について、まずまずと評価した。
筆者も幾度となくSNSに流れてくる画像を見るたびに、興味本位で思わずアプリをダウンロードしそうになったが、アップグレードの際に課金でもされ、面倒な解約作業にでもなってしまわないかと心配になり、いつも躊躇してしまっていた(ほかのアプリの事例では、高額課金被害は決して少なくない)。
しかし最近、「やっぱりインストールしなくてよかった」というニュースが報道された。
1億5千万以上の顔にアクセス可能に
7月17日、Forbes誌は「(まるでウィルス感染のように)瞬く間に広まったFaceApp 1億5,000万人以上の顔と名前にアクセス可能に」という見出しの記事を報じた。
同誌は、専門家の声として「世界中の1億人以上がGoogle Playからアプリをダウンロードし、121ヵ国のiOS App Storeで1位になっている。あなたがフォトギャラリーにアクセスすることを許可したFaceApp(開発業者はロシアのWireless Lab社)は、ユーザーの顔や名前など個人情報を取得し、それらをどんな目的に使うこともできる」と伝えた。
FaceAppの利用規約には、「あなたが当社のサービスを通して投稿したりシェアしたコンテンツや(名前などを含む)いかなる情報について、当社はユーザーに通知することなく商業化し、公開できる権利を持っている。それは、永続的で取り消し不能で、ロイヤリティフリーのライセンスである」と書かれていると同誌。
「そこにハッカーやロシア政府が万が一介入することにでもなったら、Facebookから収集されたデータベースなども使って、さらに事態は悪くなる」。ITセキュリティ専門家のアリエル・フューシュテッド氏のコメントとして、英Daily Mail紙が伝えた。同じくテクノロジー専門家、スティーブ・サマーティノ氏も「最悪の場合、顔データベースは、銀行情報などにアクセスできるデータとして使われることにもなりかねない」と警告している。
ウェブマガジンPhoneArena.comは、「あなたが登録した顔は、モスクワのどこかのビルボードに使われるかもしれないし、何らかのAI顔認識のアルゴリズムのために使われることになるでしょう」と伝えている。
ただForbes誌はFacebookの事例を引き合いにし、「プライバシーに関して随分と懸念されたFacebookだが、必ずしも全員の顔や個人情報が公に晒されるわけではないだろう」とした。
そして「それでも収集されたデータが漏洩を回避するために、安全な場所にきちんと保存されているか否かについて、我々は知る由もないが」と結論づけている。
これらの懸念を受け、米民主党のチャック・シューマー上院議員は17日、FaceAppがアメリカ国民に与えるプライバシーやセキュリティの安全性について、FBIに調査を求める要請を出している。