富の8割強が2割の富裕層に集中 過去最長の景気拡大は格差を拡大
サザビーズでは先月、印象派を代表する画家クロード・モネの油絵「積みわら」が1億1070万ドルで落札され、印象派の作品として過去最高を更新。写真は5月、ニューヨークのサザビーズで披露されたモネの絵画(2019年 ロイター/Lucas Jackson)
ロックバンド「ピンク・フロイド」のギタリスト、デビッド・ギルモアさんはこのほど、保有するギターのコレクションをクリスティーズで競売に掛け、このうちの1本「ブラック・ストラトキャスター」が約400万ドルで落札されてギターの落札額として過去最高を更新した。
サザビーズでは先月、印象派を代表する画家クロード・モネの油絵「積みわら」が1億1070万ドルで落札され、印象派の作品として過去最高を更新。サザビーズ自体が最近、著名起業家に37億ドルで身売りすることに合意した。
1日で121カ月と過去最長を達成した今回の米景気拡大期は、富の過剰と、超富裕層とその他の人々との格差のかつてない拡大が最も顕著な特徴かもしれない。
企業のM&A(合併・買収)から高級ペントハウスやスポーツチーム、ヨットなど個人の買い物まで、高額の売買案件は金額がますます膨らんでいる。根底にあるのは富裕人口の増加で、UBSによると米国では資産10億ドル以上の「ビリオネア」の数が昨年は607人と、2008年の267人から2倍以上に増えた。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの富裕層向けサービス部門の責任者、ジョン・マシューズ氏は「金持ちはますます裕福になり、裕福化のペースも上がった。消費の勢いと欲望がとにかく大きくなった」と話す。
しかし低所得層には困難と停滞も見て取れる。連邦準備理事会(FRB)の2016年のデータによると、米国では富の88%が上位20%の富裕層に集中し、この比率は先の世界金融危機前から拡大した。半面、連邦政府のフードスタンプ(無料の食料クーポン)を受けている人の数は3900万人で、ピークだった2013年よりは少ないものの、08年との比較では40%増えた。この間の人口の伸びは8%程度にすぎない。
10年前にはこれほどの経済成長は不可能だと考えられていた。米国の金融システムはぜい弱で、人々は銀行の経営破綻が資本主義を永遠に弱体化させたのではと不安を抱いていた。金融政策当局は市場の安定と資産価格の押し上げに奔走し、所得と富の不均衡という問題には熱心には取り組まなかった。
今では、世界金融危機の前に見られた「超富裕」の兆しがいくつも再浮上している。