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イラン、ウラン濃縮度を核合意上限超過の水準へ引き上げ 

2019年7月8日(月)09時00分

イランはウランの濃縮度を2015年核合意の規定を超える水準に間もなく引き上げると発表した。イランへの圧力を強めるトランプ米大統領の反発を招く可能性が高く、核合意の当事国である英仏独もイランの対応に懸念を示した。写真は同国のザリフ外相。5月撮影(2019年 ロイター/Khalid Al-Mousily)

イランは7日、ウランの濃縮度を2015年核合意の規定を超える水準に間もなく引き上げると発表した。これを受けてトランプ米大統領は「イランは気をつけた方がいい」と警告。核合意の当事国である英仏独もイランの対応に懸念を示した。

イラン政府高官らは生中継された記者会見で、欧州の合意当事国が米国の制裁からイランを守る措置を講じなければ60日おきに合意履行の範囲を削減するとも述べ、さらなる違反を警告した。

イラン原子力庁のカマルバンディ報道官は「あらゆる濃度と量のウランを濃縮する用意が完全にできている」とし、「数時間後に技術的なプロセスを停止し、(核合意で定められた)3.67%を超える水準への濃縮が始まる」と述べた。

トランプ大統領は米ニュージャージー州を出発する際に記者団に「イランは気をつけた方がいい。一つの目的のために濃縮を行うのであれば、私はその目的については語らないが、少しも良くない」と指摘。

イランは「多くの悪事を行っている」と述べたが詳しくは言及しなかった。「イランは自動的に核兵器保有の権利を持つような状況を求めているが、決して核兵器を持つことはない」と続けた。

マクロン仏大統領は、イランの決定を核合意への「違反」として非難した。

英外務省報道官も、イランは直ちに活動を元に戻す必要があると述べた。

欧州連合(EU)は核合意を弱体化させる行為を直ちに停止するようイランに強く促すとともに、他の当事国と連絡を取っているとし、この問題を検証する合同委員会を設置する可能性があると明らかにした。

イランのザリフ外相は7日、欧州の核合意当事国が自らの義務を果たせば、合意履行を後退させる措置は全て「元に戻すことが可能」とツイッターに投稿し、一定の交渉余地を残した。

仏大統領府の関係者は、現時点でイラン核合意の紛争解決手続きは発動されないと述べた。仏政府は7月15日までに全当事国で再協議することを目指しているという。

イラン原子力庁のカマルバンディ氏は、ブシェール原発で燃料として使用するためウラン濃縮度を5%に引き上げる方針だと述べた。

イランは核合意の前には20%まで濃縮していた。核兵器には90%程度への濃縮が必要だ。

[ドバイ 7日 ロイター]


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