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ボリス・ジョンソン英首相はハードブレグジットにやる気満々だ

2019年7月30日(火)07時15分
ジョシュア・キーティング

STEFAN ROUSSEAU-POOL-REUTERS

<合意なきEU離脱を望んでいるわけではないとする新首相だが......。期限までの3カ月間にEUと議会の包囲網をどう突破するのか>

ボリス・ジョンソンは7月23日、保守党党首に就任。翌24日には正式に首相の座に就いた(写真は党首選に勝利し対立候補にたたえられるジョンソン)。

おそらくブレグジット(イギリスのEU離脱)と最も関係が深いイギリスの大物政治家だろう。2016年の国民投票ではEU離脱派の先頭に立ち、その後メイ首相の離脱合意案に反対して閣僚を辞任。保守党党首選では、EUとの合意があってもなくても10月31日の期限までに必ず離脱すると約束した。

ジョンソンは首相就任後最初の議会演説で、下院で3度否決されたメイの離脱案は「受け入れられない」と明言。論争の的になっているアイルランド国境の「バックストップ条項」も拒否すると約束した。

同条項はイギリスとEUが包括的な貿易協定に合意するまでの間、アイルランド共和国と英領北アイルランドの国境では厳格な国境管理を行わないというもの。もし「合意なき離脱」になれば、イギリスとEUの国境を越えて取引される製品は税関審査を受けなければならない。そうなれば経済だけでなく、北アイルランドの平和まで危うくなると懸念されている。

EU首脳は離脱合意の再交渉を繰り返し否定している。EU内には、ジョンソンがメイの離脱案に自分流のアレンジを加え、議会の説得に乗り出してくれるのではないかと期待する向きもあるが、実現性は低い。

ジョンソンは合意なき離脱を望んでいるわけではないと言うが、本人の演説や離脱派で固めた新閣僚の顔触れから判断する限り、やる気満々だ。

ジョンソンに追われた元閣僚を含む多くの下院議員は、断固阻止する構えだ。つまり離脱期限までの3カ月間に、ジョンソンはEUと議会の包囲網を強行突破しなければならない。

©2019 The Slate Group

<2019年8月6日号掲載>

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※8月6日号(7月30日発売)は、「ハードブレグジット:衝撃に備えよ」特集。ボリス・ジョンソンとは何者か。奇行と暴言と変な髪型で有名なこの英新首相は、どれだけ危険なのか。合意なきEU離脱の不確実性とリスク。日本企業には好機になるかもしれない。

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