最新記事

イスラエル

非ユダヤ人との結婚は「2度目のホロコーストのようなもの」? イスラエル教育相発言の真意

Israeli Minister: Jews Marrying Outside Religion Is 'Like the Holocaust'

2019年7月12日(金)14時00分
トム・オコナー

仮装してユダヤ教の祭に出かけるユダヤ系アメリカ人の家族(ニューヨーク、2018年3月1日) Shannon Stapleton-REUTERS

<異教徒との結婚を通じた同化で戦後600万人のユダヤ人が失われた、というイスラエル極右の危機感>

イスラエルの教育相が、北米在住のユダヤ人が異教徒と結婚することをホロコーストに例えた。教育相の報道官が認めたという。

ラフィ・ペレス教育相は、以前は軍のユダヤ教指導者で、2019年6月にベンヤミン・ネタニヤフ政権の閣僚に任命された。7月9日に報道官がAP通信に対して認めたところによれば、ペレスは7月1日の閣議で「(異教徒との)同化はホロコーストのようなものだ」と発言した。インターネットメディアのアクシオスは、この閣議に出席していた3人(匿名)の発言を引用し、アメリカ在住のユダヤ人がユダヤ教以外の宗教を信仰する人と結婚することについて、ペレスが「2度目のホロコーストのようなもの」だと語ったと報じている。

<参考記事>ドイツ有名ブロガー 偽のホロコースト体験談でタイトル剥奪

閣議には、ユダヤ人民政策研究所のデニス・ロス議長や、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンの米歴代政権で高官を務めたある人物も参加したと報じられている。この中でユダヤ人と非ユダヤ人の結婚が世界で増えていることが議題にのぼり、ペレスは、こうした結婚の結果は、過去70年の間に「600万人のユダヤ人民が失われた」ことに等しいと語ったという。

ペレス・イスラエル教育相(写真)の発言を批判する米有力ユダヤ団体のツイート


アメリカのユダヤ人コミュニティーも反発

アクシオスによれば、同国エネルギー相のユバル・スタイニッツがペレスの見解に反論。「まず我々は、アメリカ在住のユダヤ人を無視したり軽蔑したりするのをやめるべきだ。そして宗教だけではなく、それ以上に文化や歴史の観点から彼らをユダヤ人と認めるべきだ」と主張した。ネタニヤフは、アメリカ在住のユダヤ人がユダヤ教から離れていくのを食い止めるのは難しいと指摘し、彼らがよりリベラルになりつつあると感じていることを明らかにしたという。

<参考記事>ドイツにネオナチ・テロの嵐が来る

ペレスは正統派ユダヤ教の指導者で、主に極右政党から成る統一右派連合の代表を務めている。彼らの強硬な見解は、イスラエル国内のリベラルな政治傾向と対立することが多く、時にはネタニヤフ率いるリクード党のようにより世俗的な右派グループとも衝突する。ペレスの今回の発言に対しては、イスラエルだけではなくアメリカのユダヤ人コミュニティーからも強い反発の声が上がった。

ユダヤ系団体「名誉棄損防止連盟(ADL)のジョナサン・グリーンブラットCEOは9日、「ユダヤ人が非ユダヤ人と結婚することを形容するのに『ホロコースト』という言葉を使うなんて信じられない。『ショア(ホロコースト)』を矮小化する発言だ」とツイート。「ショア」にはヘブライ語で「絶滅」の意味もある。

「ユダヤ人コミュニティーからあまりに多くのメンバーを遠ざける発言だ。こうした根拠のない主張は、人々を激怒させたり嫌な気持ちにするだけだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

全米鉄鋼労組、日鉄のUSスチール買収に断固反対 財

ビジネス

FRBの独立性、経済成果に「不可欠」=ミネアポリス

ビジネス

米中の現状、持続可能でない 貿易交渉の「長期戦」想

ワールド

プーチン氏、現在の前線でウクライナ侵攻停止を提案=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「利下げ」は悪手で逆効果
  • 4
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中