最新記事

人体

若年層の頭蓋骨にツノ状の隆起ができていた......その理由は?

2019年6月21日(金)18時00分
松岡由希子

後頭部にツノ状の隆起が見られることが多くなっているという...... (Shahar & Sayer, Scientific Reports, 2018)

<オーストラリアの研究者が18歳から86歳までの1200名を対象に調査したところ、33%に外後頭隆起の突出が認められた......>

テキスト・ネック(スマホ首)とは、テキストを打ち込んだり、動画を閲覧したり、ゲームをしたり、前かがみになってスマートフォンなどのモバイル端末を長時間、頻繁に操作し続けることによって引き起こされる首の張りや痛みを指す。

老若男女問わず、スマートフォンが世界的に普及した昨今、子どもや若者にもテキスト・ネックが広がっており、身体の姿勢や成長に影響を及ぼし、頭蓋骨の形すら変えるおそれがあることが明らかになっている。

前かがみの角度が大きいほど、外後頭隆起の突出が起こりやすい

豪サンシャインコースト大学のデビッド・シャハル博士らの研究チームは、18歳から30歳までの若者218名を対象に外側頸部のレントゲン写真を分析し、2016年3月22日、学術雑誌「ジャーナル・オブ・アナトミー」でその成果を発表した。

これによると、被験者のうちの41%に外後頭隆起の突出が認められ、10%は20ミリ以上の外後頭隆起が認められた。外後頭隆起の突出は、女性よりも男性に多く認められ、中には、その大きさが35.7ミリに達するものもあった。なお、ヒトの外後頭隆起は通常5ミリ程度で、10ミリを超えると大きいとされている。

さらに、シャハル博士らの研究チームは、18歳から86歳までの1200名を対象に、年齢や性別、前かがみ姿勢の角度と外後頭隆起の突出との関連についても分析した。科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」で2018年に掲載された研究論文によると、被験者のうち33%に外後頭隆起の突出が認められ、男性のほうが外後頭隆起の突出が多く、前かがみ姿勢の角度が大きいほど、外後頭隆起の突出が起こりやすいこともわかった。また、仮説に反して、年齢が高くなるほど、外後頭隆起の突出が起こりにくいことも示されている。

enlarged_eops_scientific_reports-1.jpg

Shahar & Sayer, Scientific Reports, 2018

また、シャハル博士は、この10年間に外後頭隆起の突出を発見することが増えたとBBCに語っている。

スマートフォンの利用時間が長くなると......

これらの研究成果では、外後頭隆起の突出を引き起こす原因について明らかにされていないが、2016年1月には韓国の大邱大学の研究チームによって「スマートフォンの利用時間が長くなると、姿勢と呼吸機能の双方に悪影響をもたらす」との研究成果が示されている。

シャハル博士らの研究チームも「スマートフォンやタブレット端末などの過度な使用に伴って異常な姿勢が続くことが、外後頭隆起の突出につながっているのではないか」とみており、とりわけ若年層の筋骨格系の健康を害するおそれを懸念し、姿勢改善のための教育を通じてこれを予防する必要性を訴えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中