最新記事

日本外交

イラン訪問で北朝鮮外交の失点を取り戻せるか 安倍首相

Japan Was Left Out of North Korea Talks So It's Stepping Up Now on Iran

2019年6月13日(木)19時50分
トム・オコナー

仲介役は果たせたのか?(6月12日、テヘランで安倍首相を歓迎する式典。隣りはイランのロウハニ大統領) Official President website/REUTERS

<アメリカとの仲介役を果たすべくイランを訪問した日本の安倍首相だが、トランプもハメネイ師も譲歩の気配は微塵も見せておらず、説得は至難の業だ>

朝鮮半島の核問題では、蚊帳の外に置かれた感のある日本が、アメリカとイランの緊張が高まると、ここは日本の出番とばかりに安倍晋三首相が6月12日~14日の日程でイランを訪問している。交渉の橋渡し役を務めるためだ。

<参考記事>ホルムズ海峡付近で日本の海運会社のタンカーが被弾

日本の首相がイランを訪問するのは41年ぶり。イランでは1979年の革命で欧米寄りの国王が国外に逃亡し、イスラム教シーア派の指導による共和制が成立。以後ほぼ一貫して、この国は日本の最も重要な同盟国であるアメリカと敵対関係にあった。イランの核兵器開発をめぐる両国の緊張が一触即発の様相を呈すなか、6月12日にイランの首都テヘラン入りした安倍は、出発前に羽田空港で記者団に次のように決意のを語っていた。

「中東地域では緊張の高まりが懸念されている。日本としてできる限りの役割を果たしたい」

<参考記事>成果が問われる安倍首相のイラン訪問――何をもって「成功」と呼ぶか


北朝鮮問題で日本は置き去り

6月12日に行われたイランのハサン・ロウハニ大統領も会談では、安倍が公式ツイッターで述べた「地域の平和と安定」を望む思いに共感を示した。だが友好ムードはともかく、日本が緊張緩和に実質的に貢献できるかは疑わしい。北朝鮮との首脳会談も実現していない状況ではなおさらだ。

2016年の米大統領選でドナルド・トランプが予想外に勝利を収めると、各国首脳が対応に戸惑う間に安倍はすぐさまニューヨークに飛び、トランプタワー内のペントハウスを訪問。各国の首脳中一番乗りで就任前のトランプと会った。翌2017年には、トランプと北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)党委員長が激しい威嚇の言葉を交わし始めたときも、常々日本を脅してきた北朝鮮が日本近海や上空に向けミサイル発射実験を繰り返すなか、安倍は一貫してトランプ側についた。

だが東アジアの各国の関係図は2018年初めに大きく変わる。金正恩が突然、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対話を呼びかけ、さらにトランプがそのプロセスに加わったのだ。以後、北朝鮮の核問題解決のために作られた6者協議の参加国のうち、日本を除く4カ国、韓国、アメリカ、ロシア、中国の首脳は次々に金正恩と会談。安倍だけが置き去りだった。

東アジアの他のプレイヤーと違って、「日本と北朝鮮は今すぐ2国間対話を行うような政治的インセンティブがないからだ」と、米シンクタンク・カーネギー国際問題倫理評議会の「アジア対話プログラム」を率いるデビン・スチュワートは指摘する。

<参考記事>イランが濃縮ウランを増産、核合意は生き残れるか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中