最新記事

移民

トランプ、メキシコと不法移民対策で合意 関税発動を停止

2019年6月8日(土)11時34分

6月7日、トランプ米大統領は、不法移民対策を巡りメキシコと合意したことを明らかにし、メキシコ製品への制裁関税発動を無期限で停止すると表明した。写真は米・メキシコ国境。5月25日撮影(2019年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)

トランプ米大統領は7日、不法移民対策を巡りメキシコと合意したことを明らかにし、メキシコ製品への制裁関税発動を無期限で停止すると表明した。メキシコが不法移民対策を強化することで合意し、米・メキシコの「関税戦争」はひとまず回避された。

トランプ大統領は、ツイッターへの投稿で「米国はメキシコと合意文書に署名した。よって10日に発動する予定だったメキシコに対する関税は無期限で停止された」と述べた。

「メキシコは、同国を経由し米南部の国境に押し寄せる移民の波を阻止する強力な措置を講じることに合意した。これは、メキシコから米国への不法移民の大幅に減らす、または排除するための措置だ」としている。

トランプ大統領は5月末にメキシコの不法移民対策の不備を理由にメキシコ製品に最大25%の制裁関税を課すと表明。今週、ワシントンで米国、メキシコ双方の当局者が3日間にわたり協議していた。

米国とメキシコの共同声明によると、メキシコは米国に入国した難民申請者の審査が行われる間、メキシコに送還して待機させる措置を拡充することで合意。また、メキシコが国境警備要員の派遣など、不法移民対策を強化するとしている。

共同声明は「米国は南部国境における現行の移民保護手続きを直ちに拡充する」とし、「米南部国境を越えて入国した難民申請者はただちにメキシコに送還され、そこで審査を待つことになる」と説明。「メキシコは、これらの人々が難民審査を待つ間、国際的義務に則り人道的理由で入国を認める」としている。

一方、米国は、メキシコを「安全な第三国」に指定し、中米からの難民申請者の大半をメキシコが恒久的に受け入れることを要求していたが、今回の合意にそれは盛り込まれなかった。

共同声明によると、両国は不法移民に関する協議を継続し、今回の合意が「所期の成果をもたらさない場合は追加措置を講じる」方針で、それを90日以内に発表する。

ワシントンで米と協議していたメキシコのエブラルド外相は、10日から国境警備要員を派遣する予定としている。

エブラルド外相は、合意に満足していると評価。「交渉が始まった時点では、米国はより強硬な措置を提案していたが、最終的にはその中間をとった内容の合意となった。公平なバランスだと思う」とし「安全な第三国」が合意に盛り込まれなかったことの重要性を強調した。

外相はまた、中米移民の増加の背景にある要因に対して共同で取り組むというメキシコ側の提案を、米国が支持したことに言及した。

ポンペオ米国務長官は、別途、メキシコのエブラルド外相に謝意を示す声明を発表。「米国はメキシコと協力してこれらのコミットメントを履行し、米南部の国境から入国する不法移民の波を阻止して国境を強固で安全なものにすることを期待している」と述べた。

*内容を追加します。

[ワシントン/メキシコ市 7日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 独占取材カンボジア国際詐欺
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アメリカン航空、今年の業績見通しを撤回 関税などで

ビジネス

日産の前期、最大の最終赤字7500億円で無配転落 

ビジネス

FRBの独立性強化に期待=共和党の下院作業部会トッ

ビジネス

現代自、関税対策チーム設置 メキシコ生産の一部を米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 10
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中