最新記事

寄生虫

ハワイで旅行者がヒトの脳に寄生する寄生虫にあいついで感染

2019年6月3日(月)18時30分
松丸さとみ

治療法はなし、しかし死に至るケースも

米疾病対策センター(CDC)によると、人間が広東住血線虫症に感染した場合、今のところ対症療法程度しか治療法はない。しかし多くは、広東住血線虫が体内で死ねば自然と治癒するため、治療の必要はないとCDCは説明している。また、感染した人から別の人にうつることもない。

米誌フォーブスによると、広東住血線虫に感染しても、まったく症状が出ないケースもあれば、腸壁から入り込んで中枢神経系や脳にまで到達してしまい、深刻な状態になるケースもある。

実際に、脳にまで到達して死亡した例もある。本サイトでも昨年11月に報じたが、オーストラリアでは2010年にナメクジを食べた当時19歳だった青年が広東住血線虫症に感染した。その後、さまざまな合併症を患った末に昨年11月2日、死亡した。感染症が原因で脳に損傷を受けていたという。フォーブスなどによると、この青年がナメクジを食べた経緯は、「ナメクジが食べられるかどうか」に挑戦する遊びの一環だったようだ。CDCは、子供がこうした「挑戦」を突きつけられて受けて立ったために感染するケースも少なくないとしている。実際に、今回感染が確認されたうちの1人は、ナメクジが食べられるかどうかの挑戦を受けて食べたために感染した。

果物や野菜はよく洗い、エビやカニはよく火を通すこと

ハワイ州では、2017年に17件、2018年に10件、今年は今回確認されたケースを合わせ5件の感染報告があるが(今年の5人は全員ハワイ島で感染)、その前の10年間では合計2件の報告しかなかった。このため、広東住血線虫の生息数が増加し、生息域が拡大していると考えられているとアーズ・テクニカは伝えている。

なお日本での症例数は、国立感染症研究所によると2003年の時点で54件(死亡例1件)で、61%が沖縄での感染だった。

CDCは広東住血線虫症の影響を注意喚起する動画の中で、予防法として「果物や野菜は食べる前や調理する前に流水でよく洗う」「エビ、カエル、カタツムリ、カニなどを料理する際は、3〜5分間よく火を通すか、約74度まで温度を上げて15秒以上熱する」「貯水タンクなどはふたをする」「飲み物にナメクジなどが入らないようにふたをする」「庭からナメクジやカタツムリを駆除する(軍手を着用すること)」「ネズミを駆除する」だと説明している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中