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日本の「F35を105機購入」は脱・専守防衛の序章なのか

2019年6月10日(月)11時45分
ボニー・ジラード

LANCE CPL. ALEXIA LYTHOS/U.S. MARINE CORPS

<日本がF35を最も多く持つ米同盟国に――。中国は、専守防衛政策からの逸脱と受け止める可能性が高い>

トランプ米大統領は5月28日、日本への国賓訪問を終えて帰国の途に就いた。4日間の訪日の象徴的イベントは相撲観戦。そして手にした土産は、日本政府による105機のF35ステルス戦闘機購入だった。これで日本は最も多くのF35を持つアメリカの同盟国となる。

日本は安全保障と開発支援の両面で積極的に国際貢献を果たそうとしている。アメリカから見れば、この姿勢の変化は中国の「冒険主義」に対抗する民主主義のパートナーとして、日本の重要性が増すことを意味する。

米シンクタンク外交問題評議会は2007年まで、米中関係をアメリカにとって21世紀の最も重要な国際関係と位置付けていた。だが今では、アメリカから見た日本と中国の重要性に重大な変化が起きている。地域安全保障に対する日本の積極姿勢は、そうした変化の表れだ。

F35は日本の航空作戦能力を大幅に強化するだけでない。デニス・ブレア米退役海軍大将は、日本の新防衛大綱には「2隻のいずも級ヘリ搭載型護衛艦を多目的空母に転換する決定」が含まれていると指摘する。「(垂直離着陸機)F35B(写真)を搭載した両艦はもはや『攻撃型空母』であり、日本の防衛主体の安保政策との決別を意味すると、批判派は主張している」

日本の軍事的動向やアメリカとの軍事協力を注視する中国は、専守防衛政策からの逸脱と受け止める可能性が高い。安倍晋三首相が「戦力の不保持」等をうたう憲法第9条の改正に成功すれば、中国はいずれ武力衝突につながりかねない危険な局面の始まりと見なすはずだ。

アメリカのある相撲サイトは技の重要性を説いている。「技量に優れたベテラン力士は、自分より大きく、強く、速い相手も倒すことができる」

日本も同じことを考えているのかもしれない。

From thediplomat.com

<2019年6月18日号掲載>

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