最新記事

米外交

あの男が狙う「イラン戦争」──イラク戦争の黒幕ボルトンが再び動く

Echoes of Iraq

2019年5月16日(木)15時40分
マイケル・ハーシュ、ララ・セリグマン

一方、03年前後のイラクをめぐる状況との違いは、イランに関しては具体的な侵攻計画が存在しないと見受けられる点だ。それでもシールマンらに言わせれば、武力行使を正当化する口実を手にするため、アメリカはかつてフセイン政権に行ったのと同じ挑発を試みている。

「ボルトンはイランとの戦争を望み、機会を探っている」と、国防総省の元高官で、新米国安全保障センター上級研究員のローレン・デジョング・シュルマンは言う。「ボルトンは自らの優先事項や関心に(国防総省が)迅速に反応する体制を作り上げ、対イラン政策を率いているのは自分だとの印象を世間に与えたがっている」

ボルトンはこれまでも、イランの体制転換をあからさまに唱えてきた。最近では、イラン革命が40 周年を迎えた今年2月、ホワイトハウスが公開した動画でイランの最高指導者アリ・ハメネイに向けて「革命記念日を祝うチャンスはあまり残っていないだろう」と言ってのけた。

米メディアの報道では、国家安全保障を担う重要機関で、ボルトンがメンバーであるNSCは18年秋、イラン空爆のための軍事オプションの提示を国防総省に求めたという。イラクの首都バグダッドにある米大使館に、イランとつながる民兵組織が迫撃砲を撃ち込もうとした事件を受けてのことだ。

大統領補佐官就任当初から、ボルトンは「イラン戦争」を大目標に掲げ、反対者の排除を進めてきた気配がある。トランプがボルトンを国家安全保障担当の補佐官に任命したのは、イラン核合意離脱の数週間前。ボルトンの前任者H.R.マクマスターは、レックス・ティラーソン前国務長官と共に、核合意維持に前向きだったとされる。

よみがえる情報操作の影

今年3月に中東地域を統括する米中央軍司令官に就任したケネス・マッケンジー将軍は、イランに関してボルトンと同意見らしい。先日ワシントンで開かれた会議での演説で、イランが展開する「悪意ある」活動とその野望に警鐘を鳴らした。

「中央軍の担当地域の安定にとって、長期的かつ最も大きな脅威はイランだ」。マッケンジーはそう語り、イランのせいでイラク駐留の米軍兵士600人以上が死亡したと主張した。「戦争は望んでいない。ただし、私たちが慎重なのは実行に踏み切りたくないからだと、イランは誤解してはならない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アメリカン航空、今年の業績見通しを撤回 関税などで

ビジネス

日産の前期、最大の最終赤字7500億円で無配転落 

ビジネス

FRBの独立性強化に期待=共和党の下院作業部会トッ

ビジネス

現代自、関税対策チーム設置 メキシコ生産の一部を米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中