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イギリスの川のヨコエビからコカインが検出されて衝撃を与えている

2019年5月9日(木)19時30分
松岡由希子

水生生物からコカインやケタミンなどが検出された wikipedia

<イングランド南東部サフォークの河川で採集した淡水ヨコエビから、コカインやケタミンなどが検出され、衝撃を与えている>

英国において、田園地帯の河川流域に生息する水生生物から違法薬物のコカインやケタミンなどの化学物質が初めて検出され、英国内外に少なからず衝撃を与えている。

淡水ヨコエビから、コカインやケタミンなどが検出

英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)とサフォーク大学の研究チームは、2019年5月1日、学術雑誌「エンバイロメント・インターナショナル」で「イングランド南東部サフォークの河川で採集した淡水ヨコエビから、コカインやケタミン、農薬、薬剤などが検出された」との研究論文を発表した。

研究チームは、2018年7月、ウィブニー川やギッピング川など、サフォークを流れる5河川の15カ所で、欧州の淡水に多く生息する淡水ヨコエビをサンプル採集し、これらを分析したところ、107種類の化学成分が検出された。

なかでも、コカインはすべてのサンプルから検出され、コカインの代用として使われているリドカインもこれに次いで多く見つかった。このほか、ケタミンや医薬品のアルプラゾラム、ジアゼパム、英国で使用が禁止されている農薬のフェヌノンなども検出されている。

研究論文の筆頭著者であるキングス・カレッジ・ロンドンのトーマス・ミラー博士は「濃度は低いものの、環境に影響をもたらすおそれのある成分が検出されており、これらは野生生物にとってもリスクとなる」と警鐘を鳴らす。

また、共同著者でもあるサフォーク大学のニコラス・バリー教授は「水生動物にコカインが存在することがサフォーク特有の問題なのか、英国内外に広がっているものなのかについては、さらなる研究が待たれる」としている。

シアトル沿岸ではオピオイド系鎮痛剤も

2018年5月には、米ワシントン州シアトルとブレマートンの沿岸で生息するキタノムラサキガイからオピオイド系鎮痛剤のオキシコドンが検出されたほか、豪メルボルンでも、同年11月、近郊の河川に生息する水生無脊椎動物や水辺のクモから60種類以上の医薬化合物が見つかっている。バリー教授は「薬物などによる目に見えない化学汚染が野生動物にもたらす影響についてもっと注意を払うべきだ」と説いている。

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