さよならGDP 「ニューエコノミクス」は地球を救うか
現状打破の挑戦
この種の取組みをさまざまな形で追及している企業や地域グループは多いが、そうした哲学が最も顕在化しているのは「グリーン・ニューディール」である。
若者主導の「サンライズ・ムーブメント」の支持を受けるアレクサンドリア・オカシオコルテス米下院議員が提唱する「グリーン・ニューディール」は、社会的公正を、再生エネルギーや気候変動といった政策課題と結びつけようとしている。
これに対し、米国の主流派エコノミストらは、政治的な立場の如何にかかわらず、炭素税や環境技術への優遇制度といった形で既存のシステムに修正を加え、二酸化炭素排出量を削減するだけで十分だ、と反論している。一方で共和党や一部の投資家は、「グリーン・ニューディール」に激しい批判を加えている。
ヘッジファンドであるキャピタリスト・ピッグのジョナサン・ホーニグ氏は3月、米テレビのフォックス・ビジネスに対し、「70兆、80兆、いや90兆ドル規模のコストがかかる。社会主義者がエネルギー政策を乗っ取ろうとしている」と語った。「まぎれもない、正真正銘の社会主義だ」
だが、複数年にわたる2つの画期的な科学研究では、生態系に対する企業主導の攻撃があまりにも加速しているため、小手先の対応では手遅れになっているという結果が出ている。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は10月、地球温暖化に歯止めをかけられるよう二酸化炭素排出量を迅速に削減するには、本格的に経済を変革するしかない、という結論に達した。
6日には、130カ国で並行して行われた科学調査により、産業社会によって100万種の生物が絶滅の危機に瀕している、との結果が報告された。報告書を執筆した145人の専門家は、動植物の絶滅ペースが、過去1000万年に比べて数千倍も速くなっているという結論を出している。
報告書の共同代表執筆者である人類学者のエドゥアルド・ブロンディジオ氏は、「成長優先のマインドセット」を捨てるべき時だ、と述べている。「『これまで通りのやり方』を終らせなければならない」