「腰が引けた?」「期待外れ」 ロシア疑惑巡るモラー捜査報告書に失望の声
隠せぬ失望
その一方で、モラー氏の捜査でトランプ政権に終止符が打たれると信じていたファンの多くは、失望を隠していない。
「結局は、腰が引けた部分があった」と、保守派ニュースサイトへの批判的立場で知られるメディア監視団体メディア・マターズ・フォー・アメリカの創設者デービッド・ブロック氏は言う。
特に、対面での事情聴取が行われていたなら、トランプ大統領の意図について新たな証拠が得られ、トランプ氏のうそを押さえられた可能性があると、一部の法律専門家は指摘する。
「もしトランプがうそをつき、そのうそが報告書で指摘されていたなら、バー長官が無罪を宣言するのはもっと難しくなっていただろう」と、ワシントン州の法廷弁護士のローレンス・ロビンス氏は言う。
トランプ大統領が自主的に事情聴取を受けることを拒否したため、召喚状を出した場合、法廷闘争が長引くことを懸念した、とモラー検察官は報告書で説明。モラー氏はまた、別の提供者から十分な情報を確保したとしている。
だが、もし長期化をそれほど心配するのであれば、もっと早期に召喚状を入手できたはずだと、クリントン政権でホワイトハウスの法務担当を務めたネルソン・カニンガム氏は言う。
1990年代の「ホワイトウォーター疑惑」捜査で、当時のクリントン大統領にホワイトハウスの実習生との関係について大陪審で証言させるため、ケネス・スター特別検察官は召喚状を入手した。
クリントン氏は証言に同意し、のちに偽証と司法妨害で下院から弾劾訴追されたが、上院で無罪となった。
「トランプ氏はこの事案全体の中心人物であり、1998年のスター特別検察官のように証言を求めなかったことは、2年にわたるモラー氏の捜査に巨大な穴を残した印象だ」と、カニンガム氏は言う。
トランプ大統領が司法妨害の罪を犯したかどうか、モラー特別検察官がはっきりさせなかったことも、批判されている。
モラー氏は報告書で、トランプ氏は、汚名を晴らすために迅速かつ公の裁判を受けるという通常の手続きを踏まなかっただろうとして、自らの判断は妥当だとしている。
「犯罪があったかなかったかを見極めるために、彼は指名された。これは、説明不能で明確な失敗だ」。元連邦検察官で、今はサンフランシスコで弁護士を務めるマシュー・ジェイコブス氏は言う。
明確な結論を出さなかったことにより、モラー特別検察官は事実上、バー長官が司法妨害容疑の立件に否定的な見解を示すメモを司法省に示していたことを認識しながら、そのバー氏に判断を委ねたことになる。
モラー氏は、自らの「不活動」がどういう結果を呼ぶか分かっていたに違いないと、1990年代に司法次官補としてバー氏の下で働いたジミー・グルール氏は言う。
「そして、われわれは、法律のブラックホールに取り残された」と、現在はノートルダム大法学教授のグルール氏は総括した。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[ワシントン ロイター]
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