「一帯一路 国際シンクタンク」結成を提唱:「新国連」を立ち上げる勢い
中国がどのようにしてアフリカ53ヵ国や「BRICS+22ヵ国」および「発展途上国77ヵ国+China」(中国語では「77集団+中国」)を中国側に惹きつけることによって、全世界を掌握しようとしているかに関しては拙著『「中国製造2025」の衝撃』の第五章で詳述した。まるで「新国連」を立ち上げる勢いだ(p.252)とも書いた。
その証左が、今般の習近平のスピーチに如実に表れている。
おまけにトランプ大統領が脱退した「パリ協定」を、新たに中国を中心として創るべく、スピーチでは「緑色発展国際連盟」を設立させようとも提唱している。「緑色」とは「グリーン」、すなわち「環境保護」のことだ。債務の罠がないことを強調するために「一帯一路 持続発展性都市連盟」も結成すると強調している。
トランプは、国連からさえ「脱退するぞ」と脅しをかけてきている。
それも習近平には有利に働き、中国は現在の国連に取って代わって、中国が「一帯一路」によってグローバル経済を支配し、思想・先進文化まで赤化(親中化)させて、「新国連」もどきを世界に創りあげようとしているのである。
そのことのために中国に手を貸しているのが日本であることを自覚してほしいと切望する。
念のため、もう一度ここに貼り付けるが、1992年に中国を日本よりも大きな経済大国にさせたのは、ほかならぬ日本だ。
1992年の天皇訪中により、天安門事件に対する西側諸国の対中経済封鎖網を解除させてしまった。日本が中国を経済大国にさせておきながら、その中国が今「経済大国」であるが故に、日本は中国に取り入り、「一帯一路」にまで協力しようとしている。
安倍首相は習近平国家主席の訪日を実現させることによって「中国とのシャトル外交」に成功したとして自らの外交力をアピールしようとしているのだ。
情けないではないか――。
日本には「外交戦略がない」と言うしかあるまい。それに関しては1月21日付のコラム<日ロ交渉:日本の対ロ対中外交敗北(1992)はもう取り返せない>で詳述した。ご参考までに付言する。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。