フィリピン・ドゥテルテ、産廃ゴミ送りつけ放置のカナダに激怒「引き取らないなら戦争だ!」
韓国からのゴミは一部返送
プラスチックゴミを含むごみ処理問題は各国が抱える深刻な問題で、2018年7月と10月には韓国から輸出されフィリピン・ミンダナオ島北部の港に到着した合計6,500トンの「再生可能なプラスチック類のかけら」が検査の結果、産業廃棄物、木材、洗濯機などの電化製品という「再生不可能な単なるゴミ」だったことがある。
このためフィリピン国内で韓国にゴミの引き取りを求める抗議活動、デモが起きた。その際も「フィリピンは韓国のゴミ捨て場ではない」と世論が沸騰した。
交渉の末フィリピンは韓国に引き取らせることに成功。2019年2月3日にコンテナ51台分にあたる1200トンが韓国の港に到着し、残るゴミの返送も順次行う方向で協議が進んでいるという。
こうした経緯からフィリピンとしてはカナダに対しても、民間企業が対応できない場合でも何らかの解決策は見いだせる、としてカナダ側にゴミ返送を求め続けてきた。
フィリピンで相次いでこうしたケースが発生している背景には、書類上の手続きだけで輸入を受け入れてしまうフィリピンの業者と簡単に通関させてしまうフィリピン税関当局の実情も無関係とはいえない。
一部の輸入業者は「再生可能プラゴミ」の本当の正体を知ったうえで受け入れているのではないか、との疑いも浮上している。
いずれにしろ韓国、カナダから再生不可能なゴミを押し付けられた形のフィリピンでは、「ゴミ捨て場」扱いされたことでフィリピン人の誇りが傷つき、もはや看過できないとしてドゥテルテ大統領が今回怒りを爆発させたといえる。
もっとも一部では、「この時期にわざわざカナダに怒ってみせたのは大統領お得意のパフォーマンスではないか」と、5月13日に迫ったフィリピン中間選挙に向けた"選挙対策"という見方もある。ドゥテルテ大統領がカナダに対して振り上げた拳の下ろしどころとその時期が次の注目となりそうだ。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など