最新記事

フィリピン

フィリピン・ドゥテルテ、産廃ゴミ送りつけ放置のカナダに激怒「引き取らないなら戦争だ!」

2019年4月24日(水)20時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

韓国からのゴミは一部返送

プラスチックゴミを含むごみ処理問題は各国が抱える深刻な問題で、2018年7月と10月には韓国から輸出されフィリピン・ミンダナオ島北部の港に到着した合計6,500トンの「再生可能なプラスチック類のかけら」が検査の結果、産業廃棄物、木材、洗濯機などの電化製品という「再生不可能な単なるゴミ」だったことがある。

このためフィリピン国内で韓国にゴミの引き取りを求める抗議活動、デモが起きた。その際も「フィリピンは韓国のゴミ捨て場ではない」と世論が沸騰した。

交渉の末フィリピンは韓国に引き取らせることに成功。2019年2月3日にコンテナ51台分にあたる1200トンが韓国の港に到着し、残るゴミの返送も順次行う方向で協議が進んでいるという。

こうした経緯からフィリピンとしてはカナダに対しても、民間企業が対応できない場合でも何らかの解決策は見いだせる、としてカナダ側にゴミ返送を求め続けてきた。

フィリピンで相次いでこうしたケースが発生している背景には、書類上の手続きだけで輸入を受け入れてしまうフィリピンの業者と簡単に通関させてしまうフィリピン税関当局の実情も無関係とはいえない。

一部の輸入業者は「再生可能プラゴミ」の本当の正体を知ったうえで受け入れているのではないか、との疑いも浮上している。

いずれにしろ韓国、カナダから再生不可能なゴミを押し付けられた形のフィリピンでは、「ゴミ捨て場」扱いされたことでフィリピン人の誇りが傷つき、もはや看過できないとしてドゥテルテ大統領が今回怒りを爆発させたといえる。

もっとも一部では、「この時期にわざわざカナダに怒ってみせたのは大統領お得意のパフォーマンスではないか」と、5月13日に迫ったフィリピン中間選挙に向けた"選挙対策"という見方もある。ドゥテルテ大統領がカナダに対して振り上げた拳の下ろしどころとその時期が次の注目となりそうだ。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB忍耐必要、6月までの政策変更排除せず=クリー

ワールド

ロシア、北朝鮮製ミサイルでキーウ攻撃=ウクライナ軍

ビジネス

関税の影響見極めには年後半までかかる─ウォラーFR

ワールド

トランプ氏「中国を債務不履行にすべき」、ボーイング
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 2
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 3
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 6
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 7
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 8
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 9
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中