最新記事

中国

マクロン大統領も対中ダブルスタンダード

2019年4月1日(月)13時00分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

習近平国家主席のフランス訪問。マクロン仏大統領と並んで(2019年3月26日、パリ) Philippe Wojazer-REUTERS

習近平国家主席と会う前には「欧州が中国に能天気でいる時代は終わった」と豪語していたマクロン大統領だったが、首脳会談で「中国製造2025」への協力を切り出しただけでなく、中国との巨大経済協力に合意した。

マクロン大統領「欧州が中国に脳天気でいられるときは終わった」

習近平国家主席がローマに着いた日に合わせるかのように、その翌日の3月22日、EU(欧州連合)の首脳は中国に対して「生ぬるい対応は警戒すべきだ」という趣旨の見解を発表した。4月9日から開催されるEU・中国サミットでの協議内容を準備したものとされるが、それ以上に習近平訪中を控えたフランスのマクロン大統領が対中姿勢を固めたかったため、このような日程を選んだのだろう。

その証拠に、マクロン大統領はEU首脳会談のあとに記者会見を開き、「欧州が中国に脳天気でいられる時代は終わった」と宣誓するかのように毅然と表明したのだ。

この言葉を聞いた人の多くは、その直後に開催される中仏首脳会談に期待しただろう。筆者もその一人だ。どれだけ対中強硬的な勇ましい言葉を習近平国家主席に直接言ってくれるのだろうかと、実に楽しみに待っていた。

中仏首脳会談で中国を絶賛したマクロン大統領

ところがその期待はみごとに外れてしまった。なんとマクロン大統領は習近平国家主席を目の前にして、中国との友好を讃え、惜しみない協力を申し出て、巨額の経済協定にも調印したのである。

中国の中央テレビ局CCTVは巨大特集番組を組んで、習近平の欧州歴訪を1時間ごとに報道しまくった。ほぼ同じ内容でも、ずっとCCTVに喰らいついて分析を試みた。先ずは習近平国家主席とマクロン大統領の会話の主要点を取り上げてみよう。

習近平国家主席:

●中仏は国交樹立55周年、留学生派遣100周年を迎える(これに関しては次項の「1」&「2」で説明する)。

●中仏はウィン-ウィンの関係にあり、お互いの利益を尊重し、国連における協力を強化し、G20を重んじ、多国間主義を貫いて保護主義を受け入れず、気候変動などパリ協定を重んじる。

●中仏両国は、原子力・航空宇宙・農業・金融・高齢者問題などで協力する。

●(マクロン)大統領は何度も「一帯一路」では中国と協力したいと言っているが、是非とも「第三国における協力モデル」を進めたい(これに関しては次項の「3」で説明する)。

●中国は欧州との対話を優先的に強化していきたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中