5G界、一夜にして一変! 「トランプ勝利、Huawei片思い」に終わるのか
このイベントでは、5G基地局設置などへの政府補助金拡大を示唆しており、FCCは、アメリカの地方の5G整備に補助金を支給するため204億ドルの基金を設置し、民間投資の呼び水とする方針を打ち出している。
トランプ大統領は中国に対して盛んに「中国政府が特定の民間企業に投資することはWTOなどでの公平性に抵触する」として、中国政府が半導体基金を使って特定の国有企業に投資することを批難し続けてきた。にもかかわらず、自分は「アメリカ政府が特定の民間企業への投資を後押しする」という方針を打ち出しているのである。
その結果、アップルもクァルコムも、互いに損をするかもしれないことを承知で、そしてそれまでのメンツも何もかもかなぐり捨てて、トランプ政権による水面下の誘いがあり、司法で「妥協」してしまったと中国は見ているのである。
Huaweiは「失恋」したのか
中国のネットでは、Huaweiへの同情から、「アップルへの片思いだったんだね」とか「Huaweiは失恋してしまったのか」という類のコラムが数多く見られる。
中でもドキッとしたのは「いったい誰が銃口の照準をHuaweiに当てたのか?」という見出しだった。
そこにはトランプあるいはアメリカ政府を激しく批判する論調が展開されており、最終的には「Huaweiは負けない」で締めくくられている。
なぜなら、トランプ大統領の「アメリカは5Gで勝たなければならない!」という宣言は、取りも直さず、アメリカがHuaweiに負けている何よりの証拠であり、アメリカの危機感を顕著に表したものだからと位置付けているからだ。
事実、Huaweiが世界に既に設置している基地局の数は4万を超えており、ヨーロッパを始め多くの国が5Gに関してHuawei規格を用いると表明しているからだという論評が数多く見られる。現時点で、すでにアメリカの3倍に至っているという。
具体的にどれくらいの国がHuawei支持に回っているのかを検証したいが、長くなってしまったので、又の機会にしたい。
ただ一つだけ言えるのは、Huaweiがアップルに差し出した「オリーブの枝」は、5G界の動向を、大きく変えたことだけは確かだということである。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。