ゴミ対策でレジ袋を有料化開始 インドネシア、なぜか環境省が慎重論
政府部内でも立場で賛否が分かれる
ところが、プラゴミをはじめとするインドネシアの環境行政を司る環境森林省のシティ・ヌルバヤ大臣は「レジ袋の有料化は、環境森林省が進める持続可能な環境対策としてのプラゴミ対策とは直接結びつくものではなく、その効果は疑問である」と慎重な姿勢を示した。同省の一般廃棄物担当者も「有料化はビジネスの一環であり、環境対策はビジネスと結びつかない方法をとるべきだ」と地元紙「テンポ」に否定的見解を示している。
これに対しスリ・ムリヤニ財務大臣は3月6日に「(レジ袋の有料化は)プラスチックの生産、使用を抑制することにつながる。インドネシアでは現在誰もがプラゴミ問題の深刻さを理解しており、経済的、社会的に可能な限りの対策が求められていることも事実」として、有料化を支持する姿勢を表明した。
このように政府内でも財務大臣が推進派、環境林業大臣は慎重派と見解が立場によって分かれる事態となっており、有料化によるレジ袋の削減、そしてプラゴミ対策としてどこまで実効を伴った成果がでるかに注目が集まっている。
ジャカルタ市内のスーパーやコンビニではレジに「レジ袋は有料」との掲示がありエコバッグや、マイバッグの持参が奨励されている。しかし、レジでは200ルピアという安い価格であることからこれまで通りにレジ袋で買い物をする人が大半で、確かに環境森林大臣の指摘通りの「何も変わらない」状況となっている。
死んだクジラの胃から大量のプラゴミ
インドネシアでは2018年11月18日、スラウェシ島東南スラウェシ州ワカトビ県にある国立公園内の島の海岸に体長9.5 メートルのマッコウクジラの死骸が流れ着いた。
地元漁民や環境団体関係者が海岸で死骸を解体したところ、胃の中から約5.9キログラムものプラスチックゴミが回収された。(「死んだクジラの胃から大量プラスチックごみ 深刻なごみ対策にインドネシア、バスのフリーライド導入」)世界自然保護基金(WWF)インドネシア支部によると、このマッコウクジラの胃から回収されたのは硬いプラスチック片19個、プラスチックカップ115個、ビニール袋25枚、ビニール製ひも3.26キログラム、ペットボトル4個、ビーチサンダル2足だったという。
2018年5月にはマレーシアでも衰弱したゴンドウクジラを保護したところビニール袋5枚を口から吐き出し、その後死亡した例が報告されている。タイではクジラ以外にもウミガメ、イルカなど年間300頭以上がプラゴミを食べたことが原因とみられて死亡しているとの調査報告もある。
インドネシアは4月17日に大統領選挙を迎える。これまで大統領候補による公開討論会が2回開催され、環境問題もテーマになったが深刻なプラスチックゴミへの対策が真剣に討論されることはなかった。
バリ島でゴミの海を泳ぐダイバーの映像やプラゴミを食べて死んだと推定されるクジラのニュースが国際社会に衝撃を与えているインドネシアにとって、レジ袋を含む環境問題は新大統領にとって喫緊の課題の一つとなることは間違いないだろう。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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