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ロシア疑惑報告書どこまで公表? トランプと民主党に板挟みの米司法長官

2019年3月7日(木)11時04分

米大統領選へのロシア介入疑惑の捜査報告書の扱いを巡り、バー司法長官(写真)が苦境に立たされている。ワシントンの米司法省で2月撮影(2019年 ロイター/Yuri Gripas)

米大統領選へのロシア介入疑惑の捜査報告書の扱いを巡り、バー司法長官が苦境に立たされている。モラー特別検察官は、近くバー氏に捜査報告書を提出するが、報告書を開示する範囲について、トランプ大統領と議会民主党から相反する要求を突き付けられているためだ。

捜査報告書の開示問題は、バー氏にとって昨年11月の長官就任以来、最大の試練だ。前任のセッションズ氏は、ロシア疑惑捜査に関与しない考えを示したためトランプ氏に解任された。

元連邦検察官のマイケル・ゼルディン氏は「バー氏は大統領と議会民主党の両方を満足させなければならず、ひどく困難な状況にある。政治的な悪夢に見舞われている」と述べた。

モラー氏は、2016年の米大統領選でトランプ大統領陣営がロシアと共謀したか否かと、トランプ氏が違法な司法妨害を行ったかに関する最終報告書をバー氏に提出する。

民主党はバー氏がトランプ氏を守ろうとして報告書の一部を非公開にするのではないかとの懸念を示しており、強制的に開示させる必要があれば召喚状によって裁判に持ち込むことも辞さないとしている。

民主党は議会下院の過半数を握っており、召喚状を行使し、複数の委員会でトランプ氏に対する調査を行うことが可能。モラー氏の捜査報告書はトランプ氏に対する弾劾手続きを進める材料になり得る。

元連邦検察官のマシュー・ジェーコブズ氏は、報告書に「現職大統領による不正の証拠」が含まれていれば、公共の利益への寄与が極めて大きく、公開する体制が組まれるとの見方を示した。

バー氏は昨年、司法長官に任命される前に司法省への書簡で、モラー氏に大統領の司法妨害についての捜査を認めるべきではないと主張している。

法的な観点では今後物事を進める上で、バー氏にとっては司法省の特別検察官の任命に関する規則が指針となる。この規則は、捜査報告書全体を開示するよう義務付けていないが、バー氏が報告書を議会に提出することを明白に禁じてはいない。また、規則によるとバー氏は、報告書が公共の利益に資する場合に部分的に開示する裁量も与えられている。

バー氏は開示内容を巡り、大陪審での証言の秘密や機密情報の保護、守秘事項に関する大統領特権など、法的に厄介な課題に直面しそうだ。

モラー氏の捜査では、既にトランプ陣営のメンバー数人が罪を認めたり、有罪判決を受けたりしている。トランプ氏が司法妨害や他の犯罪に関与した証拠が報告書に盛り込まれれば、バー氏は開示の範囲について判断を下す必要に迫られる。

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