平成最後の就活で崩壊する「嘘」と、大人が知らない新常識
平成の終わりとともに始まる「就活の民主化」
ひとつ目のキーワードは「多様化」。これまでの仕事選びは「一瞬で一生の会社を選ぶのが普通」だった。学生は短期間の間で、一生勤める会社を選ばなければならなかった。だが、いまは、欧米の企業の多くが実施しているように、通年採用を導入する日系企業も少しずつだが増えつつある。
あるいは、厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」調査で、大卒者の3割が入社から3年以内に離職すると報告されていることから、逆を言えば7割が、転職していると読み取ることができる。新卒で入社した会社に一生を左右されるという認識は若年層で薄れているし、現に中途市場の活況化にも表れている。
次に「民主化」。リクナビ、マイナビでは手つかずの、世間的には「言いにくい」情報が表面に出てきている。このトレンドは就活に限ったことではなく、この10年のうちに、外食産業にクチコミサイトが浸透したように、他業界で実際に起こっている。企業の広告情報ではなく、「本当のことが知りたい」というユーザーの思いが支持される、というのは就活でも同じだろう。
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最後に就活生側の前提条件による不利益の撤廃だ。言うなれば、「分散化」。例えば首都圏の旧帝大や難関私立大学は圧倒的に学生の情報量が違う。大企業の本社機能が集中するのは言わずもがな、東京であり、説明会の回数も地方に比べ圧倒的に多い。
一方で、地方の就活生は物理的にも、前提条件から不利な状況に置かれている。自分の志望する企業に入社したOB・OGに辿り着くのだって難しいし、面接や説明会でひとたび東京に出ようと思えば、交通費や滞在費は馬鹿にならない。これからは、そもそも選考の前に横たわる「就活格差」の是正が本格化し、一極集中→地方や学歴を問わない就活が台頭してくる。
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実はこれらの新常識は、大学のキャリアセンターの人でも一部の熱心な方を除いては、まだまだ知られていない。リクナビ、マイナビといった旧来のナビサイトとしては、自社と利益相反になるので触れづらい部分でもあるため、大々的な周知やサービス変更は手つかずのまま、というのが実態である。
サービスや仕組みにおいて、ブラックボックス化されている部分こそが、ユーザーファーストの観点から本当に大切なこと。新卒採用サービスも、そこを明らかにして、就活生に判断を委ねればいい。だが、現在の就活システムから滲み出るのは、企業の都合、世間の建前によって作られた「一般常識と見せかけた嘘」が少なくない。親たちが知らないところで、子供は「嘘」の中で人生を賭けて闘っていることを理解していただければ幸いだ。
[執筆者]
北野唯我(きたの・ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。新卒で博報堂、ボストンコンサルティンググループを経験し、2016年ワンキャリアに参画、最高戦略責任者。1987年生。デビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)は12万部11万部 。2作目『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)は発売1カ月で6万部を突破中。レントヘッド代表取締役も兼務。