疑惑のサウジ原発計画に、トランプ娘婿クシュナーの影
クシュナー夫妻に寄り添うムハンマド皇太子(17年5月、サウジの首都リヤド) Jonathan Ernst-REUTERS
<国家安全保障を脅かす核技術の移転計画の裏で、トランプ娘婿の怪しげな資金疑惑が浮上>
2月19日、米下院監視・政府改革委員会は、トランプ政権が進めるサウジアラビアへの原発技術の輸出計画について報告書を公表した。民主党主導による調査は、アメリカの国家安全保障を危険にさらすかもしれない重大な懸念を指摘している。
米政府は議会の承認がない限り、核兵器に転用の恐れがある技術を外国に供与することが禁じられている。だが、トランプ政権はこれを回避しようとしているという内部告発もあった。
「トランプ政権とサウジアラビアとのやりとりは秘密裏に行われている」と、エライジャ・カミングス委員長たちは不審点を提示。引き続き、トランプ米大統領が側近やビジネス仲間の経済的利益を国家安全保障よりも優先していないかどうか調査している。
疑惑の人物が次々登場
報告書は、米民間企業の巨大な利権が核機密技術のサウジ移転を推進してきたと指摘し、機密保持が不十分で国家安全保障上のリスクがあると警告している。「企業はサウジ原発の建設と運営契約で数十億ドルを稼ごうとして、トランプ政権と密接かつ繰り返し接触している」
この計画は官民合弁事業を専門とする米コンサルティング会社IP3によって進められてきた。IP3顧問を務め、もともとこの計画の責任者だったのはマイケル・フリン。複数の外国政府との関係についてFBIに虚偽の供述を行ったと罪を認めたトランプ政権の元米大統領補佐官(安全保障担当)だ。
また、トランプの長年の盟友で米大統領就任式実行委員会委員長だったトム・バラックの名前も浮上している。MSNBCニュースの法律アナリスト、ケイティ・パンは「バラックは委員長として1億7000万ドルの政治資金を集めた後も引退せず、政権と親密に関わっている」と言う。バラックは、建設計画の特別代表者とされていた。
バラックはサウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)など湾岸諸国と親密で、トランプのビジネス仲間とサウジアラビアを結ぶ重要人物でもある。トランプの娘婿で、中東和平特使を務めるクシュナー大統領上級顧問をサウジアラビアのムハンマド皇太子に紹介したのもバラックだ。ムハンマドはクシュナーが「自分の言いなりだった」と自慢したと報じられている。