「色んな人が、自分が描きたい沖縄像を言っているだけなんじゃないか」
石戸さんが取材中「色んな人が、自分が描きたい沖縄像を言っているだけなんじゃないか」と言っていました。それは、語られる時にいつもパッケージ化されてしまう「沖縄」があることを意味しているようにも感じ、「ラプソディ」というタイトルをプッシュしたいと思いました。
コザのホテルのロビーでノートに言葉を書きなぐってタイトルを考えていた小暮さんに「ラプソディはどうですか? 僕のプロジェクトのタイトルでもあるので恐縮ですが...」と、提案。
ラプソディといきなり言われて分からない人もいるかもしれないけれど、ボヘミアン・ラプソディもヒットしたし、今ならその単語を見ても首をかしげずに雑誌を手にとってくれるのではないか。前述した、僕が個人のプロジェクトの撮影中に持った印象なども小暮さんに話し、「オキナワン・ラプソディとか?」なんて相談。
小暮さんが「それだ!!」というわけで、編集部に速攻連絡!
「クイーン??」(正確にはどんなだったか思い出せないけど、だいたいこんな内容)という返事が...
「違う!!!もっと深い意味があるんですよ!!」とツッコミを入れたくなる僕...。
その後、石戸さんも一緒に相談し、とりあえず3人の中では「オキナワン・ラプソディ」「沖縄ラプソディ」「Okinawan Rhapsody」とだいたいこの3つに落ち着きました。編集部でのやりとりがどうなったかは分からないのですが、「沖縄ラプソディ」英語で背景に「Okinawan Rhapsody」になったようです。
僕の中ではオキナワン(英語では、沖縄の人たちのことを Okinawan と呼びます)の方が、「沖縄の人たち(個人個人)」のラプソディとなるので、より方向性は合っていると思ったのですが、日本語で「オキナワン」と書いても表紙を見る人はピンとこないかもしれません。なので、結果的には日本語と英語の併記はベストの方法だったのではないかと思っています。カバー写真についても色々とアイディアが出ていましたが、最終的には僕が以前辺野古の海に潜って撮影した海中写真に。
記者の小暮さんとの取材では、取材の中で気づいたことを色々と相談できるので、ニューズウィークの仕事では、そんな面白さも経験させてもらっています。
そんな「沖縄ラプソディ/Okinawan Rhapsody」、記事は石戸さんによる5部構成の大作です。登場する人たちの声を生きている個人として拾い上げた、素晴らしいルポになっていると思います。終盤に出てくる、KI-YOさんのポートレイトは、二股に別れた道を背景に撮影させてもらいました。それは賛成か反対かに別れる道ではなく、彼が立っているのはそういった2択の先の未来。撮影しながらそんなことを考えていました。
石戸さんと小暮さん(と僕も末席に...)が、耳を傾けた「沖縄ラプソディ」多くの人に読んでいただけたら嬉しく思います。
※2019年2月26日号(2月19日発売)のニューズウィーク日本版は「沖縄ラプソディ/Okinawan Rhapsody」特集。基地をめぐる県民投票を前に、この島に生きる人たちの息遣いとささやきに耳をすませる――。ノンフィクションライターの石戸諭氏が15ページの長編ルポを寄稿。沖縄で聴こえてきたのは、自由で多層な狂詩曲だった。
[筆者]
岡原功祐/ドキュメンタリー写真家
1980年東京都出身。早稲田大学卒。南アフリカWITS大学大学院中退。人の居場所を主なテーマに撮影を続け、これまでに『Contact #1』『消逝的世界』『Almost Paradise』『Fukushima Fragments』の4冊の写真集を上梓。2008年度文化庁新進芸術家海外研修制度研修員。2009年には世界報道写真財団が世界中の若手写真家から12人を選ぶJoop Swart Masterclassに日本人として初選出。Photo District News が選ぶ世界の若手写真家30人にも選ばれる。また2010年には、IbasyoでW.ユージン・スミス・フェローシップを受賞。2012年、原発事故後の福島を撮影した作品でゲッティー・グラント、2014年にはコロンビアの作品でピエール&アレクサンドラ・ブーラ賞を受賞。同作品は、ライカ社100周年記念巡回展にも選出された。これまでに東京都写真美術館、クンスタール(ロッテルダム)、ケブランリー美術館(パリ)、C/Oベルリン(ベルリン)、ダイヒトールハーレン(ハンブルク)、バイエルン州立図書館(ミュンヘン)、アネンベルク写真センター(ロサンゼルス)、アパーチャー(ニューヨーク)など、各国の美術館やギャラリーでも作品が展示されている。
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