中国が先頭に立つ、再生可能エネルギー経済の新秩序
Here Comes the Sun
ヨーロッパではドイツが昨年、電力の40%以上を再生可能エネルギーで賄った。デンマークも同じく半分以上を発電している。中米のコスタリカでは2017年に300日間、全ての電力を再生可能エネルギーで賄った。
もちろん、エネルギー生産の変化だけで国際関係がひっくり返ることはない。ただし、「エネルギー外交」がこれまでのような力を持つことはなくなる。近い将来、石油やガスといった化石燃料の輸出国が新エネルギー時代に向けて経済を再構築しない限り、その世界的な影響力は低下していくだろう。
リスクを上回る恩恵がエネルギー貿易の地理的状況も一変するかもしれない。輸送ルートはそれほど重要ではなくなる。優れた「接続性」やネットワーク、グリッドインフラ(送電線や電力貯蔵施設など)を持つ国が、エネルギー供給ルートの支配において戦略的に優位に立つだろう。
その点、インフラを整備してアジア、アフリカ、ヨーロッパをつなごうという中国の「一帯一路」構想は重要だ。再生可能エネルギーの送電網でアジア各地を結ぶ「アジアスーパーグリッド構想」のように、近隣諸国の送電網を統合する動きも出てくるかもしれない。
エネルギーの転換にリスクがないわけではない。従来のエネルギーシステムの衰退は、社会的緊張やエネルギー産業における雇用喪失、経済的リスクなどのストレスを発生させる。これらの上手な管理が必要だ。
コバルトやリチウムなど再生可能エネルギー技術に欠かせない鉱物の需要増も、緊張や紛争を引き起こす可能性がある。
それでも、新エネルギー時代の恩恵はリスクを上回る。エネルギー外交の衰退とともに、外交政策の輪郭が変異し、世界の勢力図も変わるだろう。
政策立案者は再生可能エネルギーに転換するチャンスをつかみ、将来の課題に先んじるため、すぐに行動する必要がある。新エネルギー時代は、今とは全く異なる世界の形成を促進していく。そこではあらゆる国が恩恵を受けられるだろう。
<2019年2月19日号掲載>
※2019年2月19日号は「日本人が知らない 自動運転の現在地」特集。シンガポール、ボストン、アトランタ......。世界に先駆けて「自律走行都市」化へと舵を切る各都市の挑戦をレポート。自家用車と駐車場を消滅させ、暮らしと経済を根本から変える技術の完成が迫っている。MaaSの現状、「全米1位」フォードの転身、アメリカの自動車ブランド・ランキングも。
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