最新記事

オピニオン

中国が先頭に立つ、再生可能エネルギー経済の新秩序

Here Comes the Sun

2019年2月18日(月)11時40分
アドナン・アミン(国際再生可能エネルギー機関事務局長)

中国福建省に広がる信義光能(シンイーソーラー)の太陽光発電所 FEATURE CHINA-BARCROFT MEDIA/GETTY IMAGES

<再生可能エネルギーが世界秩序を変える。世界の投資の45%以上を占め、「一帯一路」を推し進める中国が、産油国に代わってエネルギー大国となるのか>

過去8年にわたり国際再生可能エネルギー機関のトップとして、新エネルギーへの移行の実情を見てきた私は、新たな地政学的現実が生まれつつあることを確信している。この新たに生まれるエネルギー地政学の地図は、過去100年間に支配的だったものとは根本的に違って見えるだろう。

19世紀は石炭が工業化を進める力となり、20世紀には石油が国の同盟関係の構築を後押しした。そして再生可能エネルギーの静かな革命が、21世紀の政治を一変させるだろう。

あまり言われていないが、再生可能エネルギーは予想以上のスピードで世界のエネルギーシステムを変容させている。

近年、技術の進歩とコストの低下により、再生可能エネルギーは競争力のある電源となってきた。価格動向からすれば2020 年までに、太陽光と風力の平均発電コストは、化石燃料価格の下限と同じくらいになりそうだ。

この静かな革命には、もう1つ重要な要素がある。気候変動に対抗することが不可欠だという合意だ。これが投資家や国際世論を動かし、野心的な再生可能エネルギーの導入目標につながった。

現在のところ世界の人口の約80%が、エネルギーの輸入が輸出を上回る「純輸入国」に住んでいる。だが将来的には、エネルギー生産は分散されていくだろう。水力やバイオエネルギー、太陽光、地熱、風力などの再生可能エネルギーはほとんどの国で、何らかの形で生産可能だ。化石燃料は産地が偏在しているが、再生可能エネルギーなら世界中でずっと均等にアクセスできる。

力を失うエネルギー外交

再生可能エネルギー経済において、大半の国はエネルギー自給のレベルを高めることができる。エネルギーの安全保障はより強化され、自国の戦略的優先事項を決定するときの自由度が大きくなる。

世界では10億人以上が電気のない生活を送っている。そんな現状を一変させるような恩恵をもたらす新エネルギー安全保障は軽視できない。

立ち回りのうまい国々は、自国向けの将来のエネルギー供給を確保するだけでなく、エネルギー経済の新たなリーダーになる好機をつかんでいる。再生可能エネルギーの超大国となるべく、先頭に立っているのが中国だ。太陽電池パネル、風力タービン、電気自動車の生産や輸出、導入では世界トップであり、2017年には世界の再生可能エネルギー投資の45%以上を占めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ホリデーシーズンの売上高は約4%増=ビザとマスタ

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成

ビジネス

ノボノルディスク株が7.5%急騰、米当局が肥満症治

ワールド

ロシアがウクライナを大規模攻撃、3人死亡 各地で停
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中