最新記事

選挙

タイ王女の首相選立候補、一転して取り下げ 国王の反対を受け入れへ

2019年2月9日(土)22時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ウボンラット王女もインスタグラムに選挙への立候補取りやめを投稿した matichon tv / YouTube

<野党による王女の首相候補届出で混乱を呼んだタイの総選挙。国王による反対表明でひとまず王族の政界入りはなくなったが、この余波は尾を引きそうだ>

3月24日に予定されるタイの総選挙で野党の首相候補としてタイ王族のウボンラット王女の名前を2月8日に選挙管理委員会に届けでた野党「タイ国家維持党」は9日、「国王の指示を受け入れる」として、ウボンラット王女の候補擁立を取りやめることを明らかにした。

同王女の政界への進出に関しては8日夜にワチラロンコン国王が全国テレビ放送を通じて声明を発表、「王族の政治への関与は許されていない」として反対する立場を強く示していた。

タイでは「絶対的地位」の国王が自らの実姉の政界入りを厳しく批判したことを同党など野党関係者は重く受け止めて、協議の末、国王の意向を従う形で擁立を断念する結論に達したとみられる。

軍政とプラユット首相側が今後反撃か

タクシン元首相を支持する野党側が、ウボンラット王女の首相候補擁立という「隠し玉」を投げ込んだことに対し、国王が素早く反応して反対を表明、さらに野党側も即刻擁立を取り下げるなど迅速な対応でとりあえず総選挙と王室を巡る問題は決着がついた。

タイ国王の政治を超越した力の大きさを改めて国内外に印象付けた結果となり、状況を静観していた軍政側、親軍政政党などが一気に攻勢、逆襲に出ることが予想される事態となっている。もっとも、事案が王室関連であることから野党側を「王族を政治利用した」とは表立って批判できないことに変わりはない。

一方で浮き彫りになった王室内部の対立の構図はとりあえず収束する形となったが、芸能界などで活動するウボンラット王女の今後の処遇が選挙戦とは離れたところで今後議論になる可能性も出ており、王室内部のぎくしゃくした関係の解決のメドはついていない。

ウボンラット王女は王室の一員なのかそれともすでに一般人なのかの議論にはとりあえず国王の「王族であることに変わりはない」との主張で落ち着き、今後の活動にもそれなりの「制約」が生じてくることも十分考えられる展開となった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスが人質リスト公開するまで停戦開始

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中