最新記事

選挙

首相候補は王女様! 王室批判厳禁のタイ、AKBのカバー歌う大物登場で選挙戦は波乱含みに

2019年2月8日(金)18時36分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ウボンラット王女の首相候補申請書類を掲げる「タイ国家維持党」の幹部 Athit Perawongmetha-REUTERS

<8年ぶりに実施されるタイ総選挙で現職のプラユット首相に強力なライバルが登場した。庶民派のウボンラット王女だ>

3月24日に投票されるタイの総選挙(下院・定数500)で各政党は擁立する首相候補も届けることになっているが、「タイ国家維持党」は2月8日、同党の首相候補としてウボンラット王女(67)を擁立することを決め、選挙管理委員会に届け出た。

タイの王室関係者が首相候補になることは異例中の異例で、選管では届け出を受理するかどうか慎重に検討しているという。

ウボンラット王女を首相候補としたのは「タイ貢献党」から分派した「タイ国家維持党」で、両党ともにタクシン元首相支持派の政党である。

総選挙で民政移管を果たそうとする軍政のプラユット首相は親軍政党「国民国家の力党」からの要請を受けて8日、首相候補となることを受諾しており、このままいくと軍政トップの現プラユット首相とウボンラット王女が首相候補として「激突」することになる。

選挙管理委員会によると7日までに立候補を届け出たのは66政党の7409人の候補者で、7政党が首相候補者を届けており、そこに現職首相と王女という候補が加わることになる展開になりそうだ。

ただ、タイでは王室に対する批判や失礼は「不敬罪」が適用されて厳しく処罰されるケースが多い。このため王女が選挙戦に実際に出馬した場合、対立候補や他の政党が選挙戦で王女を批判することはおろか言及することすら難しくなることも考えられ、異例の選挙戦となる可能性が指摘されている。

ウボンラット王女、王室離脱も準ずる扱い

ウボンラット王女は2016年に死去したプミポン前国王の長女で、正式名はウボンラッタナラーチャカンヤーシリワッタナーパンナワディー。スイスのローザンヌで生まれ、米マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学して数学の理学博士号を取得している。この留学中に知り合った米国人と結婚したため王室典範に基づき王室籍を離れた。

その後カリフォルニア大学ロスアンゼルス校で公衆衛生学修士を取得したが、1998年に離婚してタイに帰国。離婚したことでプミポン国王の外戚として王族に準じた扱いを現在まで受けている。米国人の前夫との間に子供が3人いる。現在のワチラロンコン国王は弟にあたる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中