最新記事

資源

中国が世界の半分を支配するリチウム生産 ボリビア鉱山支援はドイツが勝利

2019年2月3日(日)19時17分

ドイツは先月、ボリビアでの大規模リチウム鉱山開発を支援する協定を締結し、2国間の経済関係を深化させる事業としてこれを歓迎した。写真はボリビア南部ポトシのウユニ塩湖でモラレス大統領の旗を持つ女性。2018年10月撮影(2019年 ロイター/David Mercado)

ドイツは先月、ボリビアでの大規模リチウム鉱山開発を支援する協定を締結し、2国間の経済関係を深化させる事業としてこれを歓迎した。

これによりドイツは、バッテリーの素材となるこの希少金属を巡って中国などの大国が世界中で繰り広げている新たな「グレートゲーム(大競争)」への参戦を果たした。

ベルリンで先月12日締結された同協定は、モラレス大統領率いるボリビア政府に対して、ドイツが2年間にわたって行った熱心なロビー活動の成果だ。ドイツの小規模な同族経営企業と組む方が、中国のライバルよりも優る、と熱心に説得していたことが、両国の当局者に対するロイターの取材で明らかになった。

中国はアジアやチリ、アルゼンチンなどで協定を結ぶことにより、グローバルなリチウム市場の囲い込みを静かに進めていた。次世代エネルギー革命の鍵となるかもしれない戦略的資源の確保を狙った動きだ。

中国が過去2年間で行った南米向け投資額は42億ドル(約4600億円)に上り、同時期に日韓企業が行った類似の投資総額を上回った。中国企業は現在、世界のリチウム生産の半分近く、そしてバッテリー生産能力の60%を支配している。

ドイツ当局者は、独ACIシステムズによる今回のボリビア入札を支援した理由として、アジアのバッテリー製造企業に対するドイツの依存度を抑えるチャンスであり、独自動車メーカーが電気自動車(EV)の生産競争で中国や米国の競合他社に追いつくための支援になると考えたためだ、とロイターに語った。

ドイツ政府当局者は、一連のボリビア訪問を通じてドイツ企業との提携によるメリットを訴えるなどの働きかけを行った。またボリビアのエチャズ副大臣(高エネルギー技術担当)は、ボリビア当局者側もドイツのバッテリー製造工場を視察した、とロイターに語った。

ドイツのアルトマイヤー経済相は、環境問題に熱心なモラレス大統領に宛てた書簡の中で、ドイツが環境保護に力を入れていることを強調した。こうしたロビー活動の仕上げは、昨年4月に行われた同経済相とモラレス大統領による電話協議だった、と関係者は語る。

ACIが契約を勝ち取ったことで、ドイツは南米の「リチウム・トライアングル」に残る最後のフロンティアへの足掛りを得たことになる。まだ未開拓のリチウム鉱脈の中で世界最大級の1つが、ボリビアにあるウユニ塩湖だ。

ドイツ自動車製造の中心地チューリンゲン州で州経済相を務めるヴォルフガング・ティーフェンゼー氏は10月、ボリビア首都ラバスを訪れた際、「この提携によってわが国はリチウム供給を確保し、中国の独占を打破することになる」とロイターに語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIに追加出資 最大5.9

ビジネス

大企業・製造業DIは4期ぶり悪化、非製造業は91年

ワールド

ブラジル前大統領、ルペン氏公職追放を「左派的司法活

ワールド

中国軍、台湾周辺で陸海軍・ロケット部隊の合同演習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中