最新記事

貿易戦争

トランプ、通商合意目指し習近平と首脳会談へ 協議の前進評価の一方で3月1日を「厳格な期限」と強調

2019年2月1日(金)11時10分

トランプ米大統領は、包括的な通商合意を目指して中国の習近平国家主席と近く会談する考えを示した。ホワイトハウスで同国家主席との会談について言及する同大統領。ワシントンで撮影(2019年 ロイター/JIM YOUNG)

トランプ米大統領は31日、包括的な通商合意を目指して中国の習近平国家主席と近く会談する考えを示した。ワシントンで行われた米中通商協議について、トランプ氏とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表はともに大きな前進があったと評価した。

トランプ大統領は中国の劉鶴副首相との会談で、米中が「史上最大規模の取引」で合意できることを期待していると述べた。

新華社によると、中国代表団も声明で2日間の協議で「重要な進展」があったとの認識を示した。

習主席との会談について具体的な計画の発表はなかったが、トランプ大統領は複数回の会談があり得るとした。中国側はライトハイザー代表とムニューシン米財務長官が2月中旬頃に米代表団を率いて北京を訪問することを提案した。具体的な日程は決まっていない。

劉副首相はトランプ大統領に対し、米国産大豆の輸入を速やかに拡大することを新たに約束すると伝えた。ホワイトハウス当局者はその後、輸入の規模が計500万トンであることを明確にした。これは昨年12月に中国が大豆輸入を一部再開した後の輸入量の約2倍に当たる。

トランプ大統領はこれについて「米国の農家を非常に喜ばせるものだ」と評価した。

新華社によると、中国側も声明で米国の農産物、エネルギー、サービス、工業製品の輸入拡大の方針を明らかにした。

中国はこれまでに米国の農産品やエネルギーなどの輸入拡大を提案しているが、協議では知的財産権保護や、米企業に対する技術移転強要の是正などを求める米国側の要求も話し合われた。

ライトハイザー代表は、中国が改革を実際に履行することを確認するメカニズムなど、これらの問題で「著しい前進」があったと表明。その上で「現時点で成功を予測することはできない。しかし、うまくいけば成功を遂げられるところに来ている」と述べた。

ライトハイザー代表はその後、記者団に対し、中国が約束を履行しない場合に措置を講じるメカニズムを用意し、中国の約束を「より具体的、包括的かつ強制力のある」ものにするのが米国の目的だと語った。詳細についてはコメントを控えた。

関税撤廃を協議したかとの質問に対しては、関税は議題にならなかったと答えた。

関係筋によると、中国の農産品市場へのアクセスを巡る幅広い懸念が提起されたが、進展はほとんど見られなかったという。

ホワイトハウスによると、トランプ大統領は3月1日が中国との通商協議の「厳格な期限」とみており、それまでに合意に達しない場合、米国は3月2日に2000億ドル相当の中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げる。

トランプ氏は「習主席と私が会談すれば、全ての点について合意するだろう」と述べ、期限の延期は必要ないとの見方を示した。

ただ、大統領はこれまでに中国との合意案を拒否して関税発動に踏み切った経緯もある。トランプ氏は会談に先立ち、中国が金融サービスだけでなく製造業や農業などの分野でも米企業に市場を開放することを望むとツイートしていた。

[ワシントン 31日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中