ブレグジットめぐり英企業「議会は党派対立棚上げを」 合意なき離脱の混乱へ対策室設置も
英企業の間で、政治家に欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る論争をやめ、秩序ある離脱で合意するよう嘆願する声が高まっている。ロンドンの英議会前で17日撮影(2019年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)
英企業の間で、政治家に欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る論争をやめ、秩序ある離脱で合意するよう嘆願する声が高まっている。大企業の中には、「合意なき離脱」になった場合の大混乱に備え、「シチュエーションルーム」(状況分析室)を設置したところも現れた。
法律で定められたEU離脱期日の3月29日まで9週間を切ったが、英政府内では、離脱をどのように実施するかはおろか、離脱すべきかどうかについてすら合意が得られていない。
英議会は15日、メイ英首相がEUとの間でまとめた、経済的混乱を最小化するための約2年間の移行期間設置を含む離脱協定案を否決した。これにより、このままいけば離脱協定なしに英国がEUから離脱する可能性が高まった。合意なしに離脱すれば、港湾で大渋滞が起き、サプライチェーンが寸断され、金融市場に激震が走る恐れがある。
メイ首相が提出したブレグジット代替案の議会採決を29日に控え、英国の海運業界は政治家に対し、言い争いをやめてメイ首相がEUとの間でまとめ上げることのできるような合意に同意するよう求めた。
「党派政治はひとまず脇に置き、大局的な見地からこの国にとって最良なものは何かを考えることがわれわれに求められている」
英国海運会議所のボブ・サンギネッティ最高経営責任者(CEO)はロイターにこう訴えた。
海運大手モラー・マースクや船舶会社P&Oなど200社が加盟し、英国のモノの通商の95%を仲介している同会議所では、メイ首相は否決された離脱協定案で最も議論を呼んだアイルランドとの厳格な国境管理を避けるためのバックストップ(安全策)を削除するか、それに期限を設けるべきだとしている。
「離脱協定案の有効な代替案がなく、われわれは、ビジネスや製造業、消費者に甚大な被害と混乱をもたらす合意なきシナリオに向けて進み続けている」と、サンギネッティ氏は話す。
元英海軍代将でもあるサンギネッティ氏の発言は、世界5位の経済国である英国がEUから合意なしに離脱する可能性について、英企業がどれほど懸念を深めているかを示している。