最新記事

韓国事情

韓国で日本製品の不買運動計画がたびたび起きても不発に終わる理由

2019年1月10日(木)17時30分
佐々木和義

大韓航空の会長ファミリーへの退陣要求デモが行われた 2018年5月 Kim Hong-Ji-REUTERS

<韓国ではことあるごとに不買運動が提起される。日本製品をターゲットとする不買運動の計画はたびたび起きているが......>

ソウルの洪聖龍(ホン・ソンリョン)市議会議員が、2018年11月19日の市議会是正質問で日本製品の使用禁止を訴えた。

朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長は、市庁で使用している日本製品を国産品に代替する案について細かく点検したいとしながらも、市が購入した日本製品は放送設備、医療機器、水質測定機、漏水探知機などの特定分野で代替は容易ではないとし、また、政府調達に関する条約は法律より上位の効力を持つことから、日本製品の使用禁止は、条約に反すると述べた(中央日報)。

さらに洪市議は2018年8月にソウル市庁や各区庁、公立学校などに対して日本製品の使用状況の調査を求めた。市の条例は議員の要求に対して10日以内に回答することを定めている。各機関が1か月がかりで購買履歴の製品情報を1つ1つ確認し、日本製品は各機関の物品全体の1~2%に過ぎないと回答したが、市議はずさんな調査で実際より低い数値が出たとして、2次調査を要請した。

市職員の間からは個人の反日感情に基づく不買運動に公務員を巻き込んでいるという不満が出ており、ネットでは反日を訴えながら日本式とんかつや寿司など日本食をたびたび個人のSNSに投稿している洪議員の姿勢を問う声が上がっている。

頻発する不買要求

韓国ではことあるごとに不買運動が提起される。2009年に南東部の光州市にオープンした三菱自動車の展示場は、三菱製品に対する不買運動により、オープンから1年余りで撤退に追い込まれた。戦時中に強制労働を強いられたとして賠償を求めた女性の支援団体が208日にわたって1人デモや不買運動を展開したのだ(聯合ニュース)。

女性が起こした訴訟で、光州の地裁は三菱重工業に賠償金の支払いを命じ、三菱重工業の控訴した二審で地裁控訴部は2018年12月14日に控訴棄却の決定を下している。

2013年、大手乳製品メーカーの南陽乳業の社員が電話で代理店に製品の買い取りを強要した音声がインターネットで公開されると同社製品の不買運動が起き、2014年から15年にかけてナッツ・リターンに端を発する大韓航空への不買運動が広がった。2014年当時の大韓航空副社長趙顕娥(チョ・ヒョンア)氏が客室乗務員のナッツの出し方に激怒して滑走路に向かっていた機体を引き返させ、客室サービス責任者を降ろした事件である。

不発に終わる日本製品の不買運動

韓国企業に対する不買運動は、企業倫理に端を発するケースが多いが、日本製品をターゲットとする不買運動の計画はたびたび起きている。

2013年2月25日、600万人の会員数を抱える「小規模商店街再生消費者連盟」は、消費者団体や市民団体とともに日本製品の不買運動を実施することを決めた。同月22日に島根県が条例で定めた「竹島の日」式典を開催したことへの反発で、たばこやビール、カメラ、衣類、自動車、家電など幅広い分野を対象とする大規模な計画だった(聯合ニュース)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中