最新記事

韓国

炎上はボヘミアン・ラプソディからダンボまで 韓国の果てしないアンチ旭日旗現象

2019年1月5日(土)12時40分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

spain_20190105_014540.jpg

スペインの「ファンシネ映画祭」のポスター。当初作成されたもの(左)と韓国からの抗議を受けて修正されたもの(右) 韓国ウェブメディア뉴스컬처よりキャプチャ

洋の東西を問わずあらゆる放射線デザインがやり玉に

旭日旗問題は、日本や韓国以外の海外でも頻繁に起こっている。2018年11月スペインで開催された映画祭の公式ポスターについて韓国国内で批判が集中した。紅白の放射線の背景に招き猫が描かれており、韓国映画『Monstrum(物怪)』も招待されていた映画祭だったから、韓国内でも報道されて問題視されたようだ。

ほかにも、2018年4月に初韓国公演を行ったアメリカバンドOneRepublicのリーダー、ライアン・テダーがSNSで自身の旭日旗柄タトゥーをアップしたことが問題となったり、2月にはイギリスの歌手エド・シーランの広報映像が放射線の背景であることから旭日旗を連想させると非難されている。また、歌手エリック・クランプトンの2016年東京公演記念ポスター、イギリスのバンド、ミューズのミュージックビデオ、歌手ビヨンセが着ていた服など、韓国のネットでは旭日旗に似たデザインは常に非難の的となっている。

日韓以外の国ではこの旭日旗問題の認知度が低いためか、多くのアーティストが日本のモチーフとして旭日旗のイメージを使用しているようだ。もともと日本の国旗がシンプルなため、日の丸よりインパクトの強い放射線状の旭日旗を使用することが多いのかもしれない。

だが韓国の反応を見ていると、日本をイメージさせようとしているのではなく、ただデザインとして真ん中から放射線状に徐々に外側へ太くなっている線のデザインに対してもすべて駄目出しするようなところがある。

冒頭の映画『ダンボ』のポスターの件もまったく日本とは関係なく、ただ単にサーカスのテントの模様である。もちろん、偶然にそう見えてしまうことで気分を害す人が韓国にいるのなら、韓国内に「旭日旗禁止法」がたとえ執行されていなくとも、韓国向けのポスターは配慮してデザインを変える必要性を配給会社は考慮するべきだろう。

ただ、それによってデザイナーの知恵の結晶であるオリジナルデザインが見られなくなってしまい、それを残念に思う人がいるかもしれないことも忘れてはならない。また、まったく違う意図でグラフィックデザインとして使われている放射線すべてを排除するのも芸術的な点からやり過ぎな気もする。

ちなみに映画『ダンボ』のポスターだが、今現在韓国内では公式ポスターどころか公開日も3月以外未定のままである。唯一、ダンボの影のシルエットが壁に映っているティーザーポスターだけが宣伝素材という寂しい状況だ。

dumbo_poster.jpg

ディズニーコリアが「ダンボ」の宣伝材料として唯一公開しているポスター 韓国ポータルサイトNAVERよりキャプチャ

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中