最新記事

貿易戦争

トランプ、米国企業にファーウェイとZTE製品利用を禁じる大統領令を検討 中小通信会社は懸念

2018年12月27日(木)16時22分

12月27日、複数の関係筋によると、トランプ米大統領は、国内企業に対し、中国の華為技術(ファーウェイ) と中興通訊(ZTE)が製造した通信機器の利用を禁止する大統領令を来年にも発令することを検討している。写真はオタワで6日撮影(2018年 ロイター/Chris Wattie)

複数の関係筋によると、トランプ米大統領は、国内企業に対し、中国の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)が製造した通信機器の利用を禁止する大統領令を来年にも発令することを検討している。

大統領令は、米国企業が国家安全保障上、重大な脅威となり得る海外通信機器市場から機器を購入することを阻止するよう商務省に指示する内容。通信業界と政権の関係者が明らかにした。

華為技術と中興通訊が名指しされる公算は小さいが、関係筋の1人によると、商務省は両社製通信機器の利用拡大を制限する権限を得たと解釈する見通し。

文面は最終決定していないという。国際緊急経済権限法を発動するもので、大統領が非常事態を宣言し、商取引を規制する。

米国は、両社が中国政府の指示を受けているとみており、米国人に対する諜報(ちょうほう)活動に両社の製品が利用される可能性があると主張している。

ホワイトハウス当局者は、米国が「第5世代移動通信システム(5G)など通信インフラ整備時のリスク軽減に向け、同盟国や同様の考えを持つ連携国とともに政府内で横断的に取り組んでいる」としたが、これ以上公表できる材料はないとした。

大統領令は8カ月以上前から検討されており、早ければ来年1月にも発令される可能性がある。大統領令については、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が今年5月に初めて報じたが、現時点では発令されていない。

米国では今年8月に、両社と米政府の取引制限を盛り込んだ国防権限法が成立している。

両社のコメントは取れていない。両社は自社製品が諜報活動に利用されているのではないかとの疑惑を過去に否定している。

中国外務省の華春瑩報道官は27日、公式に確認されていないとして大統領令に関するコメントを控えると述べた。

報道官は、安全保障問題に関しては、事実によって説明されるべきだと指摘。「一部の国は何の根拠もなく、安全保障を理由に、通常の技術交流活動を政治的に利用、妨害・制限するため、犯罪行為があったと想定している」と述べた。

「これが実際には、開放、進展、公正への扉というよりも、自身を閉ざす行為であることは明白だ」と述べた。

地方の通信会社に打撃

米国では、地方の通信会社が両社の最大の顧客となっている。

モンタナ州の通信企業は2010年、自社ネットワークの入札に絡み、スウェーデン通信機器大手エリクソンの機器価格が華為技術製品の4倍近くだったと明かす。

大手携帯電話会社は、特に華為技術との関係解消に動いているが、地方の中小通信会社は相対的に価格の安い両社の通信機器を利用している。

加入者10万人未満の通信会社が加盟する米国の地方無線協会(RWA)が今月、連邦通信委員会(FCC)に提出した文書によると、同協会の会員企業の推定25%が華為技術か中興通訊の製品を利用している。

RWAの法律顧問によると、同協会は大統領令が発令されれば、会員企業が両社製品の交換を強制されるのではないかと懸念している。両社製品の交換には会員全体で8億─10億ドルの費用がかかる見通しだ。

[ワシントン 27日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250204issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月4日号(1月28日発売)は「トランプ革命」特集。大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で、世界はこう変わる


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パナマで中国の影響力拡大、米は対処の選択肢ある=米

ビジネス

日経平均は下げ渋り、「ディープシーク」は局地的リス

ワールド

豪企業景況感指数、12月は改善 コスト増直面で信頼

ワールド

グーグルマップ、「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に変
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」で記録された「生々しい攻防」の様子をウクライナ特殊作戦軍が公開
  • 4
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 5
    オーストラリアの砂浜に「謎の球体」が大量に流れ着…
  • 6
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 7
    日本や韓国には「まだ」並ばない!...人口減少と超高…
  • 8
    「これは無理」「消防署に電話を」出入口にのさばる…
  • 9
    天井にいた巨大グモを放っておいた結果...女性が遭遇…
  • 10
    AI相場に突風、中国「ディープシーク」の実力は?...…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 7
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中