最新記事

シンガポール

これはひどい! ミス・ユニバース代表の「米朝首脳会談ドレス」に非難ごうごう

2018年12月3日(月)12時38分
大塚智彦(PanAsiaNews)


今年のシンガポール最大のイベントをモチーフにしたかったのは分かるが...... Channel NewsAsia / YouTube

時間的に厳しいデザイン変更

シンガポール政府は民間の事業であることからこれまで公式なコメントを避けている。今回の衣装のデザインへの国民の批判があまりに強いものの、12月16日の世界大会までもうほとんど時間がないことから、この問題の衣装で出場する以外には手段はないとみられている。

もっとも一部からは美の競演であるミス・ユニバース世界大会に「米朝首脳会談」という政治的なメッセージを込めた衣装で参加することへの疑問も示されており、最終的にこの半円形のスカートを着用しないという選択肢もある、といわれている。

米朝会談は国際的アピールか無駄使いか

シンガポール政府は米朝首脳会談の場所を提供し、警備費などで総計約13億円相当を支出した。一部で税金の無駄使いとの指摘もなかったわけではないが、政府の「シンガポールの国際社会での評価を高める」との声に批判はかき消された形となった。

シンガポールは報道の自由、言論の自由が厳しく制限された管理国家だけに、シンガポールを自画自賛する政府の姿勢をそのまま手放しで伝える現地報道機関にシンガポール人も「洗脳」されてしまっているという。

そうしたことが今回のミス・ユニバースのシンガポール代表の衣装にも反映された形となり、政府の「国際社会での評価」を「忖度」するデザイナーと、表立って批判や反論が広がらない官製メディアの「自主規制」が浮き彫りとなっているとの見方が有力だ。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

ニューズウィーク日本版 トランプ関税大戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月15日号(4月8日発売)は「トランプ関税大戦争」特集。同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インド政府、輸入車関税の段階下げに前向き 対EU交

ビジネス

台湾中銀、為替安定に必要なら介入へ

ビジネス

米主要株価指数先物が急落、S&P500は弱気相場入

ビジネス

中国株、貿易戦争懸念で急落 「国家隊」が買い支え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ使い回しをやめるまで
  • 4
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 5
    フジテレビが中居正広に対し損害賠償を請求すべき理由
  • 6
    ユン韓国大統領がついに罷免、勝利したのは誰なのか?
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 9
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 10
    4分の3が未知の「海の底」には何がある? NASAと仏…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 8
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 9
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 10
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中