最新記事

貿易

貿易戦争、米中両国に大きな痛手 自動車・農業分野で顕著

2018年12月29日(土)12時05分

米中貿易戦争が両国に大きな損失をもたらしていることがエコノミストの調査などで明らかとなった。写真は2010年2月撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)

米中貿易戦争が両国に大きな損失をもたらしていることがエコノミストの調査などで明らかとなった。自動車やハイテク製品のほか、とりわけ農業分野への影響が大きかったという。

パデュー大学の農業経済学者ウォーリー・タイナー氏は、中国政府による大豆、トウモロコシ、小麦、ソルガム(サトウモロコシ)への関税だけで米中双方に年間約29億ドルの損失が生じると指摘。「米中両国にとって不利な状況だ」と述べた。

米農務省によれば、農産物の対中輸出総額は今年1─10月で約83億ドルと、前年同期比42%減少した。

ノースダコタ・ファーマーズ・ユニオンの幹部は、中国政府の関税により、ノースダコタ州の大豆生産者が少なくとも2億8000万ドルの損失を被っていると言及。「あらゆる商品価格が下落し、ノースダコタ州の農家に間接的に影響が及んでいるため、(損失額は)さらに約1億ドル追加されるだろう」と述べた。

同州は太平洋岸北西部の港を通じて中国に穀物を輸出している。

一方、中国も携帯電話のバッテリーなどの製品に米国の関税が課されたことにより損失を被った。

全米家電協会から委託された調査によると、中国製品に課された米国の関税はハイテク業界に月間10億ドルの追加コストを生じさせたという。

貿易摩擦は材料価格の上昇などを通じて米国の小売業や製造業、建設業などにも影響。ダラス連邦準備銀行は「特に製造業や建設業において、関税を一因として投入価格への圧力が引き続き高まった。企業は消費者への価格転嫁に苦しんでいる」との見方を示した。

米ゼネラル・モーターズ、フォード・モーター、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の米自動車大手3社(ビッグスリー)は関税コストの上昇により、今年の利益が約10億ドル減少するとの見通しを発表した。

この影響は続いており、エコノミストによると、フォードとFCAは2019年も同等の影響が出ると予想されている。

[シカゴ 28日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250304issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年3月4日号(2月26日発売)は「破壊王マスク」特集。「政府効率化省」トップとして米政府機関をぶっ壊すイーロン・マスクは救世主か、破壊神か

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イオン、イオンモールとディライトを完全子会社化

ワールド

中国実弾演習、民間機パイロットが知ったのは飛行中 

ビジネス

中国の銀行、ドル預金金利引き下げ 人民銀行が指導=

ビジネス

日経平均は大幅反落、一時3万7000円割れ 今年最
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 6
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 7
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 8
    老化は生まれる前から始まっていた...「スーパーエイ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    令和コメ騒動、日本の家庭で日本米が食べられなくな…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中