日韓関係の悪化が懸念されるが、韓国の世論は冷静──日本文化の浸透がその背景に?
ソウル・弘大入口エリアの日本料理店 撮影:佐々木和義
<このところ日韓関係の悪化を懸念する声が高まっているが、韓国の世論は冷静だ。訪日観光客の増加と日本文化の浸透がその背景にありそうだ>
2002年の日韓サッカーワールドカップを機にはじまった韓流ブームで、日本が韓国から輸入したコンテンツは2016年までに13億7600万ドル(約1548億1400万円)にのぼっている。日本が韓国に輸出したコンテンツは1億5000万ドル(約168億7700万円)で、輸入が輸出の約9倍に達しているが、近年、韓国では日本文化の浸透が著しい。
ベストセラー上位50位のうち7タイトルが日本の書籍
韓国の出版業界で、日本のコンテンツは根強い人気がある。大手書店の教保文庫が2018年11月18日に発表したベストセラー・ランキングで、薬丸岳の小説「誓約」が1位になるなど月間ベストセラー上位50位のうち7タイトルが日本の書籍だった。村上春樹や東野圭吾の新刊書は常に韓国のベストセラーの上位にランキングされている。
韓国語への翻訳本はもちろん、日本語の本もそのまま売られている。大型書店の教保文庫や永豊文庫では他の外国語書籍とは別に日本書籍のコーナが設けられており、文庫本から実用書、雑誌、コミックなどさまざまな日本の本が並んでいる。店頭にない日本書籍は取り寄せにも対応する。教保文庫が扱っている就職を控えた学生向けのビジネスマナー書は半数以上が日本の書籍だ。インターネット・ショッピング・サイトのイエス24でも2017年のベストセラー・ランキング上位100位のうち12タイトルが日本の書籍だった。
日本の味を求める韓国人
日本食は浸透が著しい分野である。2000年代後半から若者を中心に日本食がブームとなり、2006年に5272店だった韓国の「和食専門店」は、2018年8月には1万7290店まで増加した。若者が集まるソウルの弘大入口や江南、ソウル大入口など、日本風の建物に日本語の看板を掲げた飲食店が立ち並ぶ。日本式の居酒屋やラーメン店、うどん、スイーツやパン、丼物専門店など多様な日本料理店が集まる弘大入口エリアは外国人の間で「ジャパンタウン」と呼ばれているほどだ。
日本食文化のブームの背景に、訪日観光客の増加があげられる。英旅行比較サイト「スカイスキャナー」で、韓国からのアクセスが最も多い旅行先は日本だった(聯合ニュース)。実際の旅行先も日本が最も多く、東京、大阪に加えて北九州や静岡といった地方への旅行も注目を集めている。その2017年に日本を訪れた韓国人旅行者714万人の73.6%が日本旅行の目的に「グルメ」をあげるなど日本の味を求める韓国人が増えているのだ。
深夜食堂がブームに
和食専門店は脱サラ組に人気が高い起業アイテムとなっている。ソウル江南にある日系の和食専門料理学校では、受講生の7割を開業準備中の30代から40代が占め、大企業を退職してまもない受講生も少なくない。手に職をもたない脱サラの起業といえば、フライドチキンと相場が決まっていたが、飽和状態で新規参入が難しい状況となっている一方、日本料理は韓国料理と共通の食材が多く、客単価は韓国料理より高い。