日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?
失業者になったので、噂を聞いて、筆者の研究室を訪れたのだという。
この時には、東芝からは、まさに正式に「解雇」されていた。
これら一連の吐露の中で、最もショックを受けたのは「だから、誰もが韓国側から"解雇"されまいと、より核心的で、より機密性の高い東芝技術を韓国側に提供するわけですよ。"土日ソウル通い"者同士が競い合うのです」という件(くだり)だ。韓国側の関連企業同士も謝礼を上乗せして競い合ったという。
「東芝は認識しているのだろうか?通産省はこういった事例を把握しているのだろうか?」
複雑な正義感が頭をよぎったが、筆者を信用して相談に来た失業者を守ってあげなければならないという気持ちが、そのときは優先した。
見るも無残な日本半導体の現状
アメリカの半導体市場調査会社IC Insightsの統計によれば、2017年の世界半導体メーカー売上高トップ10の第一位を飾っているのはサムスン電子で、あのインテルを追い抜いている。2018年ではサムスン電子の前年比成長率は26%であるのに対し、インテルは14%と、インテルとの差を広げている。日本は1社(東芝)が辛うじて滑り込んでいるありさまだ。
ファブレス半導体メーカーに至っては、日本勢は1社もトップ10に入っていない。
同じくIC Insightsが2018年初頭に発表した統計によると、2017年のファブレス半導体メーカー世界トップ10は、アメリカ6社、中国2社、シンガポールと台湾各1社となっており、日本の半導体メーカーの姿はないのである。消えてしまった。
ファブレス半導体トップ10の第7位はHuaweiのハイシリコン社だが、Huaweiでさえ、ハイテク製品企業の研究開発部門を本社から切り離し、半導体の研究開発だけに特化できる会社としてハイシリコン社を立ち上げている。
日本は、これができなかった。
総合電機が半導体事業を抱え込んだまま沈んでいき、分社化する決断と経営の臨機応変さが欠けていた。
そして韓国が虎視眈々と東芝を狙っていた、あの「狡猾さ」というか「窃盗まがいの逞しさ」に気づかず、日本の当時の通産省が主導した半導体先端テクノロジーズ(Selete、セリート)に日本国内の10社以外に、なんとサムスン電子だけを加盟させて11社にし、サムスンの独走を許してしまったのである。