「中国発展の代償は我われの命」 経済成長支え使い捨てられた出稼ぎ労働者の嘆き
安定の維持
労働者たちは、中央政府から厳しい非難を浴びており、彼らが何か言うと脅しをかけてくる、とロイターに語った。
中国当局は11月中旬、すべてのウェブサイトを対象に、珪肺に苦しむ湖南省の労働者に関する報道や公表を禁じた、と同国の検閲を調査しているチャイナ・デジタル・タイムスは指摘する。
著名な国営新聞社やテレビ局は2009年に彼らの苦境を報じたが、今年はこの問題について沈黙を守っている。
こうした検閲は、中国で過去5年間強化されてきた政治的な締め付けと整合するものであり、その背景には、中国南部に始まり全国に広がった学生・労働者による抗議行動に対する弾圧がある。
今年8月には約50人の学生や活動家が全国から深センに終結して、 溶接機器メーカー深セン佳士科技公司(JASIC)の工場における劣悪な条件に対して、工場労働者とともに抗議を行った。
「珪肺に苦しむ労働者の問題は、今年きわめてセンシティブなものになった。政府がJASICの事件と結び付けられることを恐れているからだ」とPun教授は語る。
労働者たちは今年11回、深センを訪れたが、まだ十分な補償は得られていないという。前出のGuさんによれば、労働者らはその症状に応じて、50万元─110万元の補償を求めている。
ロイターの記者が桑植県に到着して12時間も経たないうちに、地元警察は労働者に電話をかけ始め、地元の警察署に報告して、誰に会ったか確認するよう命じた。桑植県の警察はコメントを拒否している。
「当局は私たちを脅す方法を知り尽くしている。今のところ、恐がって外国のメディアとはいっさい関わろうとしない労働者は大勢いる」。Guさんはそう語り、市政府の当局者から、彼の電話とソーシャルメディアアカウントは監視されていると言われた、と付け加えた。
しかし、それより心配していることは、家族に残してしまいそうな巨額の借金だと彼は言い、自身の身の上を語ることに意味があるだろうかという疑問を繰り返し口にした。
「わが国は過去40年間で非常に急速に前進した。農家が必ずしも農家を続けなくても済むようになった。それは本当に素晴らしいことだ」。Wangさんは鼻腔に挿入したチューブで呼吸しつつ、物憂げに語った。隣家に面した小さな窓には、彼の肺のX線画像が掲げられていた。
「ベッドから起き上がれればと思う。出かけて、外の様子を知りたい」と彼は言う。「でも、私の命はそう長くないだろう」
(翻訳:エァクレーレン)
[深セン(中国) ロイター]
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら