最新記事

メンタル

ミシェル前大統領夫人が告白した「インポスター症候群」って何?

2018年12月12日(水)18時40分
松丸さとみ

英国の精神科医マックス・ペンバートン医師はその理由について、「女性は伝統的に、自分は劣っており権利もないと感じるように思い込まされてきたから」だと英デイリーメール紙に書いている。そのため権力のある立場に就いたり成功を手に入れたりすると、「何かの間違いだ」と思ったり、「単に運がよかった」と感じてしまうのだ。

とはいえ現在は男女に関係なくインポスター症候群にかかることが分かっており、ペンバートン医師は「男性は(自分がインポスター症候群だと)認めることが少ない」と指摘している。

7割の人が人生のどこかでこの症状に悩む

実はこのインポスター症候群、かかるのは何も成功を手に入れた人だけとは限らない。米CBSニュースは、2013年の調査で、70%の人が人生のどこかでインポスター症候群になることが分かったと伝えている。また英インディペンデント紙によると、2017年の調査では、ミレニアル世代の3分の1がインポスター症候群になっていた。

とはいえ、アメリカ精神医学会の診断・統計マニュアルDSM-5には掲載されておらず、インポスター症候群は正式な精神疾患という扱いはされていない。しかしこの症状があるという事実は、心理学の分野の人たちから広く認められているようだ。サイコロジー・トゥデイにも、うつ病や不安障害に発展する可能性を指摘する記事が2016年に掲載されていた。

正式な病気と認められていないということは、治療法もないということになってしまう。しかし前述のペンバートン医師はデイリーメール紙に寄稿した記事の中で、この状況を脱するための方法をいくつか提案している。

人は、他人のことは大目にみてあげたりするのに、自分自身には厳しいハードルを設けてしまいがちだ。なので、自分にももっとやさしくしてあげよう、とペンバートン医師は言う。

また、もし誰かが自分や自分の仕事ぶりを褒めてくれたら、そのたびにメモに書き記しておこう。そして1週間の終わりに、それを読み返すのだ。友達が同じメモを作ったと想像してみよう。友達が見せてくれたそのリストを「買いかぶりすぎ」と思うだろうか? それとも、友達はそのリストを素直に受け止めた方がいいと思うだろうか? 素直に受け止めた方がいい、と思えれば、インポスター症候群から立ち直る一歩を踏めている。自分の成功を楽しもう、とペンバートン医師は書いている。

インポスター症候群とは。どうやって打ち勝つ? - Elizabeth Cox:TED-Ed

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中