突然の戒厳令に走ったウクライナ大統領の真意
14年から15年にかけてのロシア系武装勢力との熾烈な内戦のさなかにも、ウクライナは戒厳令を出していない。クラークソンは「(今回も)戒厳令が軍事的に必要だったとは思えない」と言う。「アメリカやEUに事態の深刻さを伝え、ウクライナの決意をロシアに示す手段という位置付けではないか」
いずれにせよ、戒厳令のために大統領選を延期する必要はなさそうだ。ポロシェンコは一貫して、かつての支配者ロシアから祖国を守れるのは自分しかいないと強調してきた。キエフの街を飾るポロシェンコ陣営の選挙ポスターには「軍! 言語! 信仰!」といった文字が並び、ロシア勢との戦いやウクライナ語の公用語化で愛国心をあおり、ロシア正教会の影響下にあったウクライナ正教会を独立に導いた彼の功績を誇示している。
要するにポロシェンコは、今は戒厳令が必要なほどの非常事態だと訴えたいのだろう。つまり、象徴としての戒厳令だ。
<本誌2018年12月11日号掲載>
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