最新記事

韓国事情

ソフトバンク孫社長が投資する韓国ECサイト「クーパン」と韓国EC事情

2018年12月4日(火)18時00分
佐々木和義

韓国では多くの中小事業者がオンライン店舗を開設している Kim Hong-Ji-REUTERS

<韓国eコマースサイト大手のクーパンが、ソフトバンクグループのソフトバンク・ビジョン・ファンドから20億ドル(約2256億円)の追加投資を受けると発表した>

韓国eコマースサイト大手のクーパン(COUPANG)は、2018年11月20日、ソフトバンクグループのソフトバンク・ビジョン・ファンドから20億ドル(約2256億円)の追加投資を受けると発表した。

2010年に創業したクーパンは2014年に米国のセコイアキャピタルとブラックロックから4億ドルの投資を受け、2015年にはソフトバンクからも10億ドルの投資を受けている。物流センターや配送システムなどを整備し、約1億2000万品目の販売商品のうち400万品目を自前の配達員が注文翌日に配達する「ロケット配送」や独自決済サービスの「ロケットペイ」、生鮮食品専門の配送サービス「ロケットフレッシュ」を導入するなどさまざまな試みで急成長を続けている(MK NEWS)。

2014年に3485億ウォンだった売上は2015年には1兆ウォンを超え、2017年には2兆6814億ウォンに倍増、2018年度は5兆ウォンに達する見込だ。売上は4年で14倍になったが、多角化と企業規模の急拡大で、2015年から17年の3年間で1兆7458億ウォンの営業損失を計上した。

韓国でeコマースが発達している要因

韓国でeコマースが発達している要因にオンライン決済システムと閉鎖的な流通システムがある。

グローバルコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが発表した「デジタル消費者時代のアジアバンキング報告書」によると、韓国のデジタルバンキング利用率は99%で、調査を行なったアジア15カ国で最も高く、直近6カ月間に1回以上 eコマースを利用したアクティブデジタル消費者もアジアでトップだった。企業対消費者のB to Cはもちろん、企業間取引のB to Bや消費者間取引のC to Cでもオンライン取引が日常的に行われている。

韓国の百貨店は、テナント方式を採用している。百貨店とメーカーは問屋等を挟まない直接取引が一般的で、売上の25%から35%以上のテナント料に加えて販売員も出店者が用意する。流通網を持たない中小企業が百貨店で商品を販売するハードルは高い(中央日報)。

コンビニエンスストアもサプライヤーが支払う高額な負担金は登録料に過ぎず、店頭に並べる商品は個々の加盟店が選択する。名が知れ渡った商品を好む消費者や加盟店が多く、知名度と資金力に劣る後発の中小企業は参入が難しい。

一方、小売流通システムが発達する前にインターネットが普及した韓国は、翌日配送が可能なエリアの人口集中とあいまって通信販売の事業効率性が高い。大手インターネットショッピングモールは、販売時手数料のみで出店料はない。受注後に商品を仕入れて発送する無在庫販売も可能で、多くの中小事業者がオンライン店舗を開設している。

最大手のイーベイコリアが運営するGマーケットやオークション、11番街、ティーモンなど電子コマース専門会社が乱立し、流通大手もオンライン販売に力を注いでいる。ロッテは3兆ウォン、新世界も1兆ウォンをEコマースに新たに投資すると発表した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

東京ガス、米シェブロンとシェールガス共同開発 テキ

ワールド

中国軍、台湾周辺で軍事演習開始 頼総統を「寄生虫」

ワールド

トランプ氏、CHIPS法監督と投資促進へ新組織 大

ビジネス

新理事に中村調査統計局長が昇格、政策の企画立案を担
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中