殺りくの号砲響かせた「バランギガの鐘」 117年ぶりに米国からフィリピンに返還
返還の背景にはフィリピンと中国の関係強化が影響
フィリピン政府は長年にわたり「3つの鐘はフィリピン現代史の遺産である」として米政府に返還を求めてきたが、米国内には退役軍人などの関係組織から「鐘は米比戦争で戦死した米兵のメモリーであり、返還の必要はない」との声もありなかなか実現していなかった経緯がある。
ところがフィリピンが中国への接近姿勢をみせたりするドゥテルテ政権になり、米政府としてフィリピンと関係改善のシンボルとして「鐘の返還」を決めたとみられている。
11月14日にはワイオミング州の空軍基地でジェームズ・マティス米国防長官とホセ・マヌエル・ロムアデス駐米フィリピン大使が返還を決める式典を行い、返還が正式に公表された。
マニラでの返還式典でフィリピンのロレンザーナ国防長官は「鐘は米国とフィリピンの暗黒時代にフィリピン人が戦ったシンボルである。しかし今は癒しの時でもある。米比両軍兵士の勇気を象徴する鐘を故郷に迎えられたことは両国関係のさらなる発展を意味するものだ」と強調して返還を歓迎した。
3つの鐘は近く地元バランギガに運ばれ、教会に戻されることになるという。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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