不況でも韓国企業の体力を奪う傍若無人の労働組合
現代自動車労組は「光州型雇用」にも反対する。韓国南東部の光州広域市は平均年俸4000万ウォンの労働者1000人で年間10万台を生産する自動車工場の建設を計画する。政府と光州市が住宅、教育、医療、育児などの施設を支援し、賃金の一部を補填する内容で、市は直接雇用と間接雇用とを合わせて1万人規模の雇用創出効果を見込んでいる。賃金を抑える代わりに雇用を増やすというこの計画に、現代・起亜自動車は前向きだが、高給取り組合員の既得権を守り、平均年俸9400万ウォンのいわゆる「貴族労組」は反発を強めている(中央日報)。
経営危機から脱した韓国GMも労組に悩まされている。2018年4月、富平(プピョン)本社の社長室に組合員数十人が押しかけ、暴れ回ったあげく鉄パイプを振り回して什器を破壊した。法定管理の危機に置かれた会社が成果給を払わないという理由で、労組は会社側の研究開発法人の分離推進に反対し、幹部ストや青瓦台(大統領府)前での座り込みなどをしながら会社に圧力を加えている。
ルノーサムスン自動車労組も2018年10月初めに賃金引き上げを要求して4年ぶりのストを行なっており、7四半期連続で赤字に陥った双竜(サンヨン)自動車は労組の反発などで解雇者119人を復職させることになった。
労組が若者の就職する道を妨げる
こうした動向の中で、現代・起亜自動車は、1996年に建設した牙山(アサン)工場を最後に韓国内に工場を建設していない。貴族労組の手が届かない中国、インド、南米、米国に19カ所の工場を建設し、組合員数を上回る5万人の雇用を生みだしているのだ。
韓国のマスコミが'貴族労組'と呼ぶ自動車等の労働組合に同調する消費者はいない。韓国の労働組合加入者は全労働者の10.4%に過ぎず、民主総連の組合員はわずか3.4%である。この既得権を守る'貴族労組'は会社経営を圧迫するが、しわ寄せを受けるのは会社だけではない。9割の組合に属さない労働者は、貴族労組の高賃金が商品代金に転嫁されることを憂い、品質低下を懸念する。労組は会社が新卒者を採用する体力を奪い、若者が就職する道を妨げている。