最新記事
性犯罪

「暴力」がなければ「強姦」ではない!男寄りの判決相次ぐ

Court: Nonconsensual Sex Without Violence Isn’t Rape

2018年11月26日(月)17時30分
キャサリン・ハイネット

レイプの間中、携帯電話で撮影していた男5人が保釈されたことに抗議するデモ(マドリッド、2018年06月22日) Susana Vera-REUTERS

<レイプに「暴行(強姦)」と「虐待」の軽重があるスペインでは、抵抗できない女性に対する犯行や、犯行を録画していた「だけ」の加害者は、軽い刑で済んでしまう>

スペインの裁判所はこのほど、女性が同意していないのに性行為を強要、強姦の罪に問われていた男2人に対し、「暴力的」な行為がなかったとして強姦罪には相当しないとする判決を下した。

BBCによれば被害者は「性格的に弱かった」うえにアルコールを摂取していたため、被告らは暴力に訴えることなく性行為を行えたと判決文は指摘したという。

被告2人はおじとおいの関係で、性的暴行罪(強姦罪に相当)ではなく性的虐待罪でそれぞれ禁錮4年半の判決を受けた。BBCによれば、性的暴行罪が成立した場合、刑期は最長で15年になった可能性がある。

事件は昨年8月、スペイン東部カタルーニャ自治州リェイダ県で起きた。被告2人は被害者の女性とともにナイトクラブに行き、その後、女性を車の後部座席に連れ込んで性行為を強要したという。

公判で被害者は、男たちにやめるように頼んだと涙ながらに証言したとスペインの通信社エウロパ・プレスは伝えている。被害者は、やり返されるのが怖くて殴る蹴るの抵抗はできなかったという。

5人による集団暴行でも「性的虐待」

判決文によれば「被害者は弱い性格で、その上アルコールと抗うつ剤を摂取していたため、自衛能力が弱くなっていた可能性もある。犯行はそれにつけこんだもので、暴力的もしくは脅迫的な行為に及ぶ必要がなかった」。

そして暴力行為がなかったことから、性的暴行罪は適用できないと判断した。

4月にはスペイン北部パンプローナの裁判所が、女性に性行為を強要し、その一部始終を携帯電話で撮影した5人の男に対し、やはり性的暴行罪を適用しない判決を下した。

この判決に対して批判が高まったことからスペイン政府は7月、性的暴行罪の要件を定めた法律の改正を公約。BBCによればペドロ・サンチェス首相は議会に対し、改正法の下ではすべての当事者が明確に同意を示さなければならないと述べたという。「ノーと言えばそれはノーを意味するし、イエスと言わなかった場合もノーを意味する」と首相は述べた。

また、カルメン・カルボ副首相は改正法について「その人のセクシャリティに加え、意志と自由と尊厳」を守るものだと述べている。

エウロパ・プレスによれば、今回の2人の被告の弁護を担当したアグスティン・マルティネス弁護士は、控訴と保釈を求める意向を明らかにした。ちなみに同弁護士は、パンプローナの裁判でも被告らの弁護を担当したという。

(翻訳:村井裕美)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、欧州PMIでユーロ一

ワールド

アングル:米政権の長射程兵器攻撃容認、背景に北朝鮮

ワールド

11月インドPMI、サービスが3カ月ぶり高水準 コ

ビジネス

S&P、アダニ・グループ3社の見通し引き下げ 米で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中