米中対立における中国の狡さの一考察
2013年にナスダック市場に上場していた半導体メーカーである「スプレッドトラム」を買収しているが、このスプレッドトラムはアメリカに留学してシリコンバレーで半導体メーカーに就業したのちに帰国した元留学生たちによって作られた会社だ。
2015年にはドイツの半導体メーカー「キマンダ」の子会社を買収。
同じく2015年にはアメリカのヒューレット・パッカードの子会社「新華三公司」を買収して傘下に置く。
このようなことをくり返しながら、「清華紫光集団」は「NAND型フラッシュメモリ」などを手中に収めた。
たとえばこの「NAND型フラッシュメモリ」はデータの読み込み速度が速く記憶容量も抜群に大きいので、AI(人工知能)やビッグデータの処理(国民全員の監視体制構築など)に大きな力を発揮する。
結果、「清華紫光集団」は、2017年のファブレス半導体メーカー世界トップ10にランクインしている(詳細は来月発売予定の『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』)。
米中対立には様々な要素があるが、やはり「中国製造2025」に集約され、その遂行に当たって、中国の「狡さ」が目立つのである。
その中国に強硬策を貫こうとするアメリカと、「協力を強化する」と手を差し伸べる日本の動向の間には、「新冷戦ではない」としてもなお、納得のいかない印象を拭うことはできない。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。