最新記事

中国経済

中国人投資家、今度はギリシャ不動産「爆買い」に走るワケ

2018年11月8日(木)12時44分

10月29日、アテネの空港では、週に3回到着する何百人もの中国人投資家を、ギリシャの不動産仲介業者が出迎えている。写真は、物件を案内されるリアン・ウェンミンさん(29)。アテネで5月撮影(2018年 ロイター/Costas Baltas)

アテネの空港では、週に3回到着する何百人もの中国人投資家を、ギリシャの不動産仲介業者が出迎えている。売り出し中の物件に案内するため、市内の現場に車で直行する。

底値の不動産価格と、欧州の中でも寛大な「ゴールデン・ビザ」制度に引き寄せられ、中国からギリシャにやって来る訪問者は後を絶たない。ギリシャの場合、不動産に25万ユーロ(約3200万円)投資すれば、更新可能な5年間の滞在許可が得られる。

それは、首都アテネにあるアクロポリスの丘を一望できる寝室3部屋付きの物件を購入するには十分な額だ。

ギリシャ経済が2009年の債務危機を受けて崩壊し始めてから、初めて不動産市場に回復の兆しが見えている。ただし不動産価格はピーク時と比べ、いまだに4割程度低い水準にある。

アテネ在住のバシリスさんは昨年、自宅の買い手を見つけることをほぼあきらめかけていたとき、自宅アパート前に止まったミニバンから、中国人家族4人が降り立った。その翌日、バシリスさんはオファーを受けたという。

「彼らが内見したのは一度だけ。頭金を支払ってもらい、売却手続きが始まった」

バシリスさんは2007年、将来有望なイェラカス郊外の物件を32万ユーロで購入した。その後、成人した子ども2人にそれぞれアパートを買ってやるため、自宅の売却を決めたという。バシリスさんは中国人家族に22万ユーロで自宅を売った。

ギリシャ中央銀行のデータによると、不動産価格は第2・四半期に前年同期比で0.8%上昇。第1・四半期は0.1%の上昇で、2008年以降で初めて上昇に転じた。

不動産向け海外直接投資は昨年、前年に比べ91%増加して2億8700万ユーロに達した。一方、ギリシャ税務当局のデータによると、不動産販売からの税収は今年1─7月に年率41%増加して、2億0470万ユーロに上った。

「電話による問い合わせが増えている」と、アテネ不動産協会のレフテリス・ポタミアノス会長は言う。同協会には約3000の仲介業者が加盟している。「圧倒的多数は外国人だが、ギリシャ人もいる。群を抜いているのは間違いなく中国人だ」

今年と来年にアテネ圏の住宅価格は年平均5─7%上昇すると、同氏は予想する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米シティ、サウジから地域統括拠点設置の認可取得=社

ビジネス

ECB、インフレ目標下振れリスクを注視=仏中銀総裁

ビジネス

VW、コスト削減に人員削減と工場閉鎖は不可避=ブラ

ワールド

パキスタン首都封鎖、カーン元首相の釈放求める抗議デ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中