最新記事

アメリカ政治

米中間選挙、ハリウッドが描く「反トランプ作戦」のシナリオとは?

2018年11月1日(木)16時00分

10月11日、反トランプ運動の最前線にいる米ハリウッド業界は、11月6日の中間選挙において州知事などの選挙の候補者を支援するために、スターたちの影響力と創造性を生かそうとしている。写真は俳優のブラッドリー・ウィットフォードさん。2月にビバリーヒルズで撮影(2018年 ロイター/Mario Anzuoni)

ハリウッドで先月、100人を超える人々の関心が政治に注がれた。場所は「OMG WTF」という派手なサインを掲げたクールなピアノバーだ。

トランプ米大統領と不倫関係を持ち、口止め料を支払われたと主張している米ポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんの弁護士を務めるマイケル・アベナッティ氏を中心に集まった人々だ。

「OMG WTF」は、共和党が優位に立つオハイオ、ミシガン、ジョージア、ウィスコンシン、テキサス、フロリダの6州で州議会議員などのポストを狙う民主党候補を支援する政治行動委員会(PAC)だ。州の頭文字を並べたものだが、どちらも「なんてことだ」という意味の3文字の略語で構成されている。

米コメディ「ファニー・オア・ダイ」の元プロデューサー、ベン・シーハン氏(33)は、この会の名称は「私たちが毎日、感じている感情でもある」と語り、人々の笑いを誘った。

ハリウッドのエンタメ業界は、これまでトランプ大統領に対する政治的抵抗の最前線に立っており、移民から銃規制に至るまで、さまざまなテーマに関する進歩的な意見を後押しするために、各種の授賞式やソーシャルメディア、寄付などの場を利用してきた。

ハリウッドは現在、11月6日の中間選挙において「ダウンバロット」と呼ばれる選挙の候補者を支援するために、スターたちの影響力と創造性を生かそうとしている。「ダウンバロット」というのは通常、投票用紙のなかで国政選挙よりも下の方に記載されている州や地方自治体の公職選挙を意味する言葉だ。

このアプローチは、2016年の米大統領選挙が与えた「トランプ・ショック」を受けて、ハリウッドが練り直した政治行動シナリオの一環だ。

4年に1度の米大統領選では、選挙資金を集めるセレブたちが話題を呼び、彼らは有力候補の応援にも登場する。人気歌手のケイティ・ペリーさん、俳優のジョージ・クルーニーさん、プロバスケットボール選手のレブロン・ジェームズさんなど、前回の大統領選でトランプ氏に敗れたヒラリー・クリントン民主党候補を支持したセレブは数多い。

だが、中間選挙の際にはこうしたトップクラスのエンターテイナーが目立たないのが普通であり、彼らが乗り出すのは、注目の激戦区というのが、これまでの常だった。米ポップス歌手テイラー・スウィフトさんは今月、政治に関する沈黙を破り、テネシー州知事と同州選出の上院議員について民主党候補を支持することを明らかにした。

トランプ氏が大統領に就任し、ムスリムが多数を占める複数国家からの渡航禁止措置などの政策を導入し始めると、ハリウッドのタレントたちは、こうした動きに抵抗することに情熱を傾けるようになった、と政治ストラテジストは指摘する。彼らは、ハリウッドがどうすれば最も効果的に反撃できるかをじっくり検討しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中